MISSING TWINs Ⅲ (ページ7)

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硬い物が何かと当たった音がした。
その音は次々とあがり、最後にガシャン。
ガラスの砕け散った音をかき消すように、辺りは悲鳴に包まれた。

「芹っ！！」

大我くんは悲痛な声で私の名を呼んだ。
周囲は泣き声と倒れ伏した人の名を呼ぶ声と、まだ状況が飲み込めず困惑した声とで溢れかえっていた。

「芹！！芹！聞こえる！？」

「揺すっちゃダメだ！救急車！誰か１１９番！」

ぐったりと横たわる私を含め、何人もの人が倒れて動かない。
怪我に呻く人も見受けられた。

赤。

朱。

緋…。

起きてしまった事故を、私は呆然と見下ろすしかなかった。

ーどうして…？事故は…変えられない運命なの…？ー

変えられなかった出来事があった。
それと同じくらい、変えられた出来事もあった。
私は、どうやってもこれ以上生きる事は出来ないのかと項垂れた。
目の前で起きた大事故が頭から離れない。

ー…っ！芹…っー

ーお兄ちゃん…ー

はねられる瞬間、お兄ちゃんに抱き込まれた私が居た。
大型トラックはブレーキ音を１つも上げず、無灯で突っ込んで来た。
信号は歩行者分離式で、こちらが青だった以上車側は全て赤。
信号に倣ったつもりなのか、運転手は見事に車道から歩道にかけてを赤に染め上げて、ビルに突っ込んでやっと停車した。
はねた私の体は転がった後、その上を何tもあるであろうトラックに乗り上げられ、未だにピクリとも動かない。
私を守ろうとしたお兄ちゃんは、もう白い靄ではなかった。

お兄ちゃんに包まれながら私が守ろうとしていたのは、綺麗だと、似合うと大我くんに褒められたウェディングドレスだった。

轢かれ、変形した腕の中の箱は、赤に浸食されていた。
中身は、お察しだろう…。

その夜、複数の救急車が駆けつける事となった街中の惨事を、ニュースは挙って報道した。
死者３名。
重傷者６名。
軽傷者１６名にものぼる大事故だった。