｡｡｡｡｡ ページ38
「いい雰囲気のところ悪いけどさ、せめてカーテン閉めてやってくんね？」
「あ、すみません」
同室の男性だろう声の方に視線を滑らせた。
耳に馴染んだそれに、つい動かした体が猛烈に痛い。
けれど、そんな事に構ってなどいられなかった。
「お、お兄ちゃん…？」
「正確には“従兄の”お兄ちゃんな。久しぶり、芹」
ナニコレ。
まだ世界交ざってるの？
終わったんじゃないの？
いくら考えても思考がグルグル回るだけで、平然と話しているお兄ちゃんと大我くん、そして、松葉杖をついたお兄ちゃんを支えている瑠璃さんがそこに居た。
「あ、やっと目が覚めたんだね。良かった…大我が助けに入ったのにこのままだったらどうしようかと思った…」
「だから大丈夫だって言ったろ？心配し過ぎでこいつら毎日お通夜みたいな顔してたんだぜ？京本なんてひどい時は泊まり込んでまで泣いてんの。うぜーうぜー」
「おい！余計なこと言うなよ！」
ゲラゲラ笑うお兄ちゃんに耳まで真っ赤にして食ってかかる大我くん。
瑠璃さんがお兄ちゃんを椅子に座らせてから私の傍らに近づいて
「あんなこと言ってるけど、うちの大我もすごい心配してたんだよ」
ぎゃんぎゃんやりあっている２人を見ながらそう耳打ちをくれた。
思考停止状態の私はきっと口を開けて固まっていたと思う。
「こんにちはー。芹起きた？」
「そう簡単には起きないだろうよ。まぁ脳波に異常はないから、そのうち起きるとは思うが」
「あら、おはよう。見事なアホ面ね」
「芹！起きてる！」
「…芹ー！！」
夏海、優美、紫姫、響希、ありすが話しながら続々と病室に入って来て、私を見ると安心したと言わんばかりに相好を崩した。
ありすに至っては飛びついて来るものだから、私は再び痛みに呻く事になった。
「おかえり」
６人が声を揃えてそう言って、
「おかえり」
真似るようにお兄ちゃんと瑠璃さんがそう口にした。
「…おかえり、芹」
痛みを堪えている私の手を取って、優しく大我くんが囁いた。
私の世界。
ちっぽけで、誰にも知られない私だけの物語。
不可思議で、間違いだらけで、すれ違いもあって、それでも、誰よりも幸せな私だけの世界。
“帰って”きた。
もう絶対にこの場所から離れないと心に誓って、私は溢れ出した雫を無視して笑った。
「ただいま！」
ーーFin.
ラッキーアイテム
佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Fin. | 作成日時：2019年5月24日 16時
