�将�ix ページ30
「お前さ…マジすげーわ。ドラマも主題歌もすげー良くてさ、断って勿体無かったと思ったっつーの！」
「俺はラッキーでしたけどねー」
向かい合った先の聖くんは豪快に笑いながら、私にメニューを差し出した。
迷惑かけた侘び、なんて、後輩を可愛がる聖くんらしいけれど、建前だと確信してる。
ヘラヘラと話しながら、時折言葉を探すように左上に視線が行く。
人間は嘘をつく時や迷っている時に、視線が左に行くって聞いたことがある。
「芹はどれにすっか決まったか？」
「カルボナーラで」
「おう。すんませーん」
ランチタイムからズレているせいでガラガラの店内だから良いけれど、店員召喚のボタンは聖くんの手元にありますよー。
注文を終えて店員が去ると、沈黙が訪れた。
「そーいやさ、あの歌カッケーよな」
「マジすか！？やりっ！」
「おう。めちゃくちゃ…さ…」
「…」
「ほら、あれだ…」
「色々考えてくれました？」
沈黙が嫌だったのだろう聖くんは、私の歌の感想を述べようとして何かに気づいたのだろう、口籠り、歯切れの悪いそれに私はズバリと切り込んだ。
片眉を潜めた不格好な笑みを象ったその表情は、直ぐ様苦渋へと変わり、話そうとする唇は息だけを吐いてまた結ばれる。
「僕は先輩方皆さんのファンですし、尊敬しています。だからこそ後悔して欲しくないと思います。僕の歌は、聖くんが今と先を見比べる為の切っ掛けになりましたか？」
「…おう」
「僕は聖くんの出した答えが聞きたいと思っています。けれど、中丸くん達より先に聞くべきではないとも思っています」
「なんっか…めちゃくちゃ迷惑かけたから言い辛いんだよなぁ…芹が先に聞いてくんね？カメと上田には文句言われるだろうし、身辺整理で暫く時間とれねーだろうし」
「はい。いくらでも聞きます。僕は今日オフですから」
「サンキュ」
運ばれてきた食事に手をつけながら、聖くんは私に向かって静かに話し始めた。
大きくなった周囲の期待、それが喜びから苦痛に変わった事、メンバーは変わらないのに自分だけが辛いと思った事、それに腹をたてる自分が嫌で八つ当たりをする前に逃げ場所を作った事。
今の自分が振り返った時、無性にメンバーに会いたくなった。
KAT-TUNの田中聖で居たいと思った事。
眉間に皺を刻み、自嘲を浮かべる聖くんはそれらを私に語ってくれた。
「聖くん」
「ん…」
「一番のファンがジュリだって事、忘れないであげてください」
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佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年3月28日 1時
