MISSING TWINs (ページ26)

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ⅩⅩⅤ ページ26

『なんで俺らがこんな事言ってんのか分かってんのか！？お前の為だろ！』

『うるせぇ！俺の勝手だ！お前らに関係ない！』

『二人とも落ち着け。もう少し冷静にならないと話にならないだろ』

『タクマ！お前もヒロに言いたい事言ってやれよ！』

『いま言ったってしょうがないじゃん。ヒロに聞く気無いんだから』

『だからって…』

私の扮するヒロに怒鳴り散らすのは髙木くんが演じるサトル。
それを窘めているのが伊野尾くんが演じるタクマ。
売れない時期を３人で支え合って乗り越え、最近波にのっているのだが、ヒロは女遊びに加え薬、違法賭博の経営など様々な悪事を働いている。

『…俺、もうヒロには付き合ってらんねぇわ。これからタクマと２人でやっていく』

『ヒロ、本当にこれでいい？考え直さない？』

『別に。俺は一人でもやってけるし、お前らの方がヤバいだろ？』

ニヤリと不敵に笑い、伊野尾くんを見遣る。
しかし、焦点は合わせず、明らかな異常性を醸し出す。
私はヤク中の自己中。
自分勝手で救いようの無いバカな男なのだ。

『っ、もう、ヒロなんて知らないよ。自惚れも大概にしな。どっかで野たれ死んでも泣いてやらないから』

長年やってきた２人の背中をヘラヘラと見送り、ヒロは一人での活動を開始する。
もちろん、上手く回る訳なんて無い。

『くそっ！何でだよ！アイツらより俺の方が歌も演技も上手いだろ！？』

書き溜めた曲の譜面を破り捨て、机の上の物を床へと荒々しく落とす。
１度肩で息をして、裸になった机を叩き割る勢いで殴り付けた。

ーーーガシャン

ガラスの天板が高い音をたてて砕けた。

『くそっ！くそっ！どいつもこいつも分かってねーんだよ！』

割れたガラスで傷ついた拳で血を撒き散らしながら部屋を暴れまわる。
俺は出来るのに。
分かって無いヤツが多すぎる。

「カット」

「芹くん！手当て！」

「無茶苦茶するなぁ、テーブル叩き割るなんて…」

「すみません…つい…」

「相変わらずだねぇ、君は」

橋場さんがにこやかに私を見つめる。
あ、これはヤバい。

「でもね、あれは本物であって作り物じゃないんだ。役づくりに文句は無いが、何かをする時には相談してくれと最初の時に言った気がするのだが…忘れてしまったのかな？」

「イエ、オボエテイマス」

「じゃあ、次は無いね」

「ハイ、モウ少シ冷静ニ演技シマス」

「よろしい」

人の好い笑みで私の肩を叩いた手に力を込めた橋場さんは、ただの好好爺ではない。