MISSING TWINs (ページ23)

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ⅩⅩⅡ ページ23

「あ！芹くん、久しぶり」

「山岡さん！お久しぶりです！」

「何年ぶりだろうね」

「僕が８歳の時以来です」

「そんなに経つんだ。すっかり大きくなったね」

「まだまだですよ」

「色気も出てきたし」

「本当ですか！？ありがとうございます！」

山岡さんは私が初めて出演したドラマの脚本家さん。
ドラマ撮影の為に来ていた局の廊下での再会。
山岡さんはどこか疲れたような顔で私の成長を喜んでくれた。

「山岡さんのドラマ撮ってるんですか？空き時間に見学行ってもいいですか？」

「あー…そろそろ顔合わせしないといけないんだけど、主演に添えようとしてた人が脚本読んで辞退しちゃってね…」

「えぇっ！？僕山岡さんの脚本、人間味溢れてて好きなんですけど…どんなのなんです？」

「１人の青年が転落人生から立ち直るって感じかな？最後は物悲しく終わらせるのが理想」

「いいですね！是非台本読みたいです。あ、僕出演者じゃないから読めない…残念です…」

「…芹くん、やってみる？」

あれから、山岡さんのドラマはとてもじゃないけど私が出れるようなテーマがなくてご縁がないままだったけれど、放送されたものは全てチェックしている。
とても面白いから繰り返し観すぎて、両親はつけたと同時にそれぞれの趣味に席を移す。
それほどまでに心酔している山岡さんからのお誘いを、私が断る訳がないでしょう？

「いいんですか！？やった！また山岡さんのドラマに出れる！」

「芹くんが出るなら少しディープなシーンを削って…」

「やります！どんなのでもやりますよ！」

「さすがに中学生にベッドシーンはねぇ」

「あ、それは無理ですね。やりたくないとかではなく、年齢で…」

「だいぶ男っぽくなったし、声変わりもしたみたいだし、芹くんは大人っぽい表情得意だしね。俺も楽しみだよ」

表情の明るくなった山岡さんは、少し脚本を直す事と私が主演を努めることを監督達に伝えに行くと、足取り軽く去っていった。
転落していく男か…と心の中で反芻して

「山岡さん！僕！１つだけお願いがあるんですけど！」

角を曲がりかけた山岡さんの背中に声を投げた。