MISSING TWINs (ページ15)

今日:1 hit、昨日:19 hit、合計:39,353 hit

ⅩⅣ ページ15

たくさんの経験を重ねて、私も周りも大人になっていった。
背も伸びて、声変わりが始まった頃、曾祖母の葬儀が行われた。
ぼんやりと、前の世界でも曾祖母が亡くなったのは中学校の頃だったなぁと思い出した。
前の世界の記憶はだいぶ磨耗している。
最期に私を呼んだ友人の声さえ鮮明には思い出せない。
真っ黒な和洋装の入り雑じる焼香の匂いの充満する部屋の中で、１人故人を悼むフリをしながら考えていた。
あの時のアレはなんだったのだろう。
フラッシュバックというヤツだろうか。
あの後も時折未来の大我くんを見ることがある。
大我くんだけじゃない。
他の人もそうだ。
ぶれている。
世界が２重になっているみたいだ。

恙無く火葬も終わり、親類一同集まっての食事。
もそもそと考え事をしながら箸と口を動かす。

『世界が巻き戻り、
２つ重なったcross road
いつか君と必ず巡り会うから』

まさかね。
ごくりと食物を飲み込み、傍らのグラスを持ち上げれば中身は空。
色々と疲れてきた。

「お兄ちゃん、麦茶でいーい？」

「あ、うん…っ！？」

従姉妹の子達にお兄ちゃんとよく呼ばれるので違和感無く返答し、私は目を見開いた。

「わた…」

「ん？どうしたのー？お兄ちゃん」

グラスに麦茶を注いでいる少女。
この顔だけは忘れようがない。
毎日鏡の中で会っていた顔だ。

「大我ったら本当に芹ちゃんのこと大好きね。芸名まで芹ちゃんの名前にするんだもの」

「うちの芹もW大我くん、素敵とかテレビ見ながら言ってるのよ」

「ちょっ！お母さん！やめてよー！」

何、コレ。
私がいる。
私はここに居るのに。
この私も生きている。
本来の私のように、両親に愛されている。
そして、

「あのねー、お兄ちゃん。実は、会わせてとか言わないから、京本大我くんのサインって…もらえない…かなぁ…？」

私と変わらず、大我くんに焦がれていた。