�将将将将� ページ49
武藤大我が加藤瑠璃に告白をした。
ならば、私はどう返答するのが正しかった？
「…ありがとうって、嬉しそうに笑うしかないじゃん」
言い出したのはこっちなんだから。
と言うか、この体に武藤大我の心があるとか思いもしなかった。
ずっと私で動いていたし。
「ううん。ここ最近の倒れるのって、武藤大我が出てきてたからかな」
勉強机に向かい、五線譜を開きながらも考える事はそればかり。
手に持ったペンは一小節を書いただけで、それ以降は動いていない。
ーごめんー
ふと、五線譜にその言葉が浮かび上がった。
正確には、私の右手が勝手に動いていた。
「…武藤、大我さん？」
ー大我でいいよ。って言いたいけど、芹には難しいか。お兄ちゃんとでも呼んでー
「お兄ちゃん。今までごめんなさい…気づかないで体使ってた」
ーいや、いいよ。俺は芹の事大切だと思ってる。したいようにしてー
「ありがとう…」
ー瑠璃の事はごめんな。でも、あのまま別れてしまいたくはなくてー
「ううん。人を想う気持ちは分かってるよ。私も大我くんを愛しているから」
ーありがとう。瑠璃と会う時は俺が出てもいいか？ー
「うん。と言うか、返すよ。体」
ーそれはいいー
「どうして？」
長い沈黙。
端から見たら自問自答にしか見えないだろうから、私が手を動かせば良いだけだろう。
けれど、今この体の中には２人居て、腕の主導権はお兄ちゃんが持っている。
ーいつかこの体は俺に帰ってくる。それまでなら、芹も生きていて良いと思うからー
「うん、ありがとう…」
ー大体は分かってるけど、愚痴も惚気も俺が聞いてやるよー
「えぇ？」
ーもう独りじゃないの分かったろ？自分に惚気たりしなくていいー
「恥ずかしいから止めてー」
ーはいはいー
独りじゃない。
その文字が嬉しくて、視界がじんわりと滲む。
私という、居るのか居ないのか分からない存在に、お兄ちゃんが手を差し伸べてくれた。
追い出してもいいのに、共存の道を提示してくれた。
高校生になるまでの時間を、お兄ちゃんは全部私にくれていた。
ーアイドルの武藤芹は芹だろ？ー
加藤さんに会う時間を減らしてしまうのに、私が大我くんに会う時間をくれた。
「お兄ちゃん、私の事甘やかしすぎじゃない？」
ー俺は芹の兄貴だから当然だー
懐の広過ぎる私のお兄ちゃんは、今後とも私を甘やかしてくれるらしい。
私の心に広がった感謝の気持ちに
ーどういたしましてー
ラッキーアイテム
佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Fin. | 作成日時：2019年3月28日 1時
