�将将将将� ページ46
「大我ー頼みあるんだけどさー」
「何？」
「コレ、書いてくんね？」
「は？」
ここ最近役のヤンキー抜けきれてない大我くんは、よく意味が分からないとすぐにこの返しだ。
意味分からないのも理解出来る。
もう何年も一緒に居る武藤大我が京本大我くんに差し出した物。
そう、真っ白な色紙である。
「実は、俺の従妹が大我の大ファンなの。ずっと前にサイン頼まれてたんだけどさ…ずっと忘れてた」
「ずっとって？」
「…ここ数年？」
「ひでぇ」
頬を掻きながら苦笑する私に、ひどいとディスりながら爆笑の大我くん。
いったいどこがツボだったのか、息も絶え絶えになるほどに笑い尽くしてくれるのはありがたいけど、そこまで笑わなくても…と眉を吊り上げる。
「笑い過ぎ、そろそろ止めないとお前の汗だくのシャツ奪って従妹のご機嫌取ってもいいんだぜ？」
「めっちゃやだ。もう笑ってない」
「おけ。で、くれんの？くれないの？」
「芹のいとこならやるに決まってんじゃん。名前は？」
「あー…」
しまった。
そうか、私はどうやら無意識の内にサインを貰うのを回避していたらしい。
サインペンをくるくる回しながら、大我くんは私の言葉を待っている。
「芹ー？」
「うん。名前それで」
「は？それってどれ？」
「…」
「芹ー」
「それ」
「…」
何事か察したのか、大我くんの怪訝な顔。
うん、ですよね。従妹の名前は武藤芹ですとか、普通ならどうかしてるよね！？
頭の中では恥ずかしさで床を転がり回りながら、顔にはそれを出さなかった。
「えーと、もしかして、いとこの名前って…芹ちゃんって、こと？」
「そーそー。可愛い従妹の名前は俺の芸名なのさー」
棒読みの見本みたいな言い方で言えば、大我くんが興味深そうにこっちを見つめて、その後、今まで見たこと無いくらいに柔らかな微笑みを浮かべた。
「そっか」
最初は居なかった私なんだもの。
同じ名前になったって仕方ないじゃない。
などと心の中で言い訳する私の耳に、さらさらとサインペンの滑る音が入り込んでくる。
Jr.の騒ぐ声が遠く聞こえるような、そんな空間。
危うく聞き流しそうな小さな呟き。
「芹は、芹ちゃんが好きなんだ」
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佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年3月28日 1時
