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96.人徳 ページ46

炊事場に戻ったらカレーのいい匂いがしていた

先生「A。戻ったか。野菜とお肉ありがとな」

頭をポンポンされる
スニョン達は少し離れた所で遊んでいる

A「いえ、今はこれしか出来ないから」

先生「そか。足は大丈夫か?」

A「うん。今は大丈夫。皆が助けてくれるから」

先生「Aの周りにはいい男がいっぱいだなっ」

A「いい男?」

先生「そ。お前の事大切にしてくれる友達が沢山居るだろ。有難いと思えよっ」

A「…ほんと。皆凄く優しくて…あたしには勿体ない位いい奴ばっかりだよ…」

先生「まぁAにはその素質が有るって事だろ。そういうの人徳って言うんだよ」

A「人徳?」

先生「そ。人徳。品性や知性や生まれつき持つ能力や天性のこと。つまり人徳とは、その人が持つ気質や能力を表す。Aにはそういうのが元々有るんだよ」

A「なんか…怖いな…」

先生「怖い?」

A「そんな立派な人じゃないもん…。妬んだり羨んだり…我儘言ったり。品も無いし頭も良くないよっ!」

先生「Aは周りを明るくする。そばに居たら幸せな気分にさせてるの気がついてないのか?品とか知能とかじゃなくてここの問題だから」


先生は胸に手を当ててにこっと笑って言った
よく分からないけど多分褒められた?
人徳か…
あたしにそれがあるかはわからないけど
そういう人になりたいと思う。
いつかもっと大人になった時には自分に自身が持てる素敵な大人になっていたいなと思う
その時誰かを幸せな気持ちに出来ていたらきっとあたしも幸せに笑って居られるだろう


先生「A。仲間を大切にしろよ。何があっても裏切ったりするな。昨日みたいに必死で探してくれる仲間がいる事を忘れるなよ」

A「…うん」


先生が何故そんなことを言ったのかは分からないけど
とても真剣な眼差しをスニョン達に向ける先生が
凄く寂しそうでいつもより小さく見えた
余りにも哀しそうな顔するからじーっと見つめてたら


先生「穴が空く…」


そう言っていつもの爽やかな笑顔を向けた

先生も色々有るんだよね…
あたしには分からない先生の人生が。


A「先生。ありがとう。心配かけてごめんなさい…」

先生「ふふっ。無事で良かったよ」


頭をポンポンした後髪をくしゃくしゃにして炊事場へ戻って行った先生の横顔を
あたしは多分忘れないだろう。
ずるいな…かっこいいよ…先生








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作者名:ぽけ | 作成日時:2021年9月30日 23時

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