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見知らぬ声と、見知った制服。
なんにも悪いことはしてないはずなのに、
思わず生唾をのむ。
あのひとは朝まで帰ってこないはず、だから
まだ警察の方には行っていない…と思う。
「きみ、未成年かな? 証明書かなんか持ってる?」
「え、えと…」
「うん?」
そういうの、持ってない。
って言ったら連れていかれるのだろうか。
そしたらまた…帰らなきゃいけない。
静かな時間にだけ息ができる、
水が満ちた水槽みたいな場所。
俺の顔色が変わったのをみたお巡りさんは、
『ああ、やっぱり』という顔をする。
大人はいつだって自分の枠にあることでしか想像力を使えない。
手が伸びたのを見て、俺は駆け出した。
星と街頭、ヘッドライト。
キラキラと怪しく光るのを横目に兎に角走る。
ボロボロの靴、穴を塞ぐのを忘れてた。
「こら、待ちなさい!」
人の波に身体を溶かして走る。
細くて良かった、なんて思う。
お巡りさんの目が段々鋭くなるのも感じる。
あの羽根、
あの画面の中でflagの背中に生えてた羽根。
曲の中で消えたけど。
「そこの少年!いいからっ、とま」
消えたんじゃなくてきっと、
「わっ!!」
「っ、お」
どうしようもなく落ち込んだり
辛くて辛くて消えたくなったり
泣いても終わらない悲しいことがあったりした、
俺たちに与えてくれたんじゃないかな。
もしかしたら、そうなんじゃないかな。
「…っ、ごめんなさい…!」
「やっと追いついた! いやお兄さんありがとね。
この子職質中に急に走り出しちゃって」
「はぁ、そうですか」
だから、このまま、
このまま…
「ったく。待ち合わせ場所にこないからビビったわ、すんません。連れなんです」
「ええっ、でも……」
「こいつ最近越して来たんで、反対の駅前だったんですかね」
ほい、行くぞ。
長身の細っこい固い指が俺の頭を撫でた。
俺は目を驚きで口をパクパクするだけで、
その人の手に俺のスマホが割れた状態でおさまってるのを見てまた勝手に「あっ…」と声が漏れた。
茶色のパーカーにつばの突き出たキャップは…有名なブランドのものだ。
細身の黒のパンツ、そして耳元に揺れる
「腹」
「え、」
「減ってないか?」
黄緑色の稲妻。
end...?
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馬酔木(あせび)(プロフ) - しめじさんのお話大好きです!待ってました!更新してくださってありがとうございます!!! (2020年8月7日 16時) (レス) id: 71804477e1 (このIDを非表示/違反報告)
らら(プロフ) - 2番目の恋人のスピンオフ嬉しいです!大好きなお話で何度も読んでます。 (2020年8月6日 20時) (レス) id: 1dd4eecdbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しめじ | 作成日時:2020年8月6日 15時