夏休みの前に(yb×in) ページ3
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「ゆびきりげんまん」の続き
先生×生徒です。
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「……はぁ」
深めのため息を今日何度繰り返しただろう。
10回は軽く越している。
「もっと上手く言えなかったかな…」
いつもは言わない独り言がこぼれる程、
俺は小さな罪悪感を手のひらに
そのまま煙草に火をつけた。
数学準備室には灰皿を置いてある。
もちろん伊野尾には内緒だ。
「もっとって、なにを?」
「は…?」
「先生、学校で煙草吸っていいんでしたっけ?」
薄茶色のクリクリとした目が俺と指先の煙草を映す。
そう言えば今年の数学係は八乙女だったな。
昨日出した宿題ノートをってきたらしく、両腕いっぱいに積み重なっている。
つか、ノックくらいしろよ。
くしゃりと灰皿へ潰すと「やっぱいけないんだぁ」となぜか楽しそうに笑った。
「で、彼女ですか?」
「はぁ? なんじゃそりゃ」
「だって、相手がないとそんなこと悩まないじゃないですか。違います?」
「あのなぁ、悩みが全部恋愛なわけないだろ」
「ふぅん」
「お前らじゃあるまいし」
「な、そんな事ないですよ。
しんろとかそういうの、たくさん悩んでます!」
「なら、進路希望。そろそろ締切だぞ、早いとこ出さねぇとこっちが困る」
あと数分で伊野尾が来てしまう。
今日も可愛らしい包みを持って来るだろう…か。
「だって、そんないきなり進路とか言われても分かんないし。大学に行ってまで勉強、したいもないし」
「……」
「先生?」
「ああ、いや…とにかく、早く帰れ。
昼休み始まるぞ」
「……」
急に八乙女の目が細くなった。
微妙な表情。
なんというか物言いたげな、そういう。
「なんだよ、進路相談ならほうか…」
「慧、落ち込んでたよ」
「……は…?」
「目腫らして学校来てたもん、先生のせいでしょ?」
俺と伊野尾の関係はトップシークレット。
勿論友人にも秘密にしていたはず。
冷や汗がスーッと背中に流れて、小さく指先が震えた。
そして、目を腫らしていたことにも動揺した。
「何言ってんだ、お前」
「俺、察しいい方なんだよね。
なんとなく分かっちゃうんだ」
「……」
「何があったか知んないけど、慧泣かしたら先生でも許さないから」
きゅう、と真っ直ぐな目で俺を射る八乙女。
こういう時の学生の瑞々しい迄の素直さは、
あまりに眩しい。
鉢合わせる度に、大人は目を瞑ってしまうものだ。
まだ若い、そう括る。
「…わかった。ちゃんと、謝るよ」
「じゃ、約束ね」
「…ああ」
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馬酔木(あせび)(プロフ) - しめじさんのお話大好きです!待ってました!更新してくださってありがとうございます!!! (2020年8月7日 16時) (レス) id: 71804477e1 (このIDを非表示/違反報告)
らら(プロフ) - 2番目の恋人のスピンオフ嬉しいです!大好きなお話で何度も読んでます。 (2020年8月6日 20時) (レス) id: 1dd4eecdbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しめじ | 作成日時:2020年8月6日 15時