となり (ページ7)

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「…いつもそんな事言わないじゃん」

「たまには素直になってもいいだろ」

それが本音だったの？と首を揺らし、手の甲から手のひらに甘えてくる。
飼い猫のように従順な姿に身体が浮きそうになる。
ああ…やっぱり飲みすぎたな。
いつもならこのまま押し倒してるのに、
すっかり身を委ねてしまっている。

「いの…」

「じっと、してて……っん」

熱を残した下半身に頬を寄せて、溶けそうなほど熱い口の中へ導かれてしまう。
寝室はまだ寒い。
なのに体温がゆっくりと高まっていくのが分かる。
唾液でじっくり溶かされていくかのようだ。

「んぅ、ふぁ…んんっ…んぐじゅ…っ」

吐息と漏れ出す甘い声で、すっかり全身が震えてしまう。
籠る熱を加速させるかのような伊野尾の表情は、
寂しげで、どうしようもなく俺の興奮を強めていく。
口にしない願望を今、溢れ出る感情のままに伊野尾は舌を動かし瞳をうるませる。
弱ったことに、喉奥で引き締めることをいつ覚えたのかは分からない。

「んっ、んんぅ…っじゅ、じゅむ」

「そんな…吸わなくていい、っから…」

「っだって、いって、ほし…から……っんん」

垂れた二重からつるりと涙が落ちた。
久しぶりに見る丸い真珠。
月が明るい夜のせいで、暗くても表情の機微が分かって一層背徳感を感じてしまう。
ゆっくりゆっくり立ち上がっていくのを逃さぬように、下から上に舐めそやし愛おしそうに顔を埋める。

「…入れちゃ嫌なの？」

「ふぇ…っわ！」

「悪い…限界だわ」

ヒリヒリと胸が焦げるほど余裕がない。
ビールをジョッキで、その後ハイボール2杯と日本酒を…何杯飲んだかな。
話すのが苦手な奴って事にして酒を傾けることに従事したせいだろうと思いたい。
伊野尾の口で何往復か吸われただけですっかり膨らんでしまった。

「やぶ…ぅ、ん」

「口より…こっちのがいい」

「ぁ…んんっ」

車内でした冗談めいたキスよりずっと深くした。
愛情を示したかった。
身を委ねて欲しいという願いを込めたら、
スン、と鼻を鳴らして俺の背中に腕を回して絡みつく。
俺が素直になれば、きっとそうしてくれると期待していたから。

「っん、やぶ…ぅ」

「うん？」

首筋に立てた歯、強く吸う音。

「おかえし…」

寂しさの代換え品がそれでいいなら可愛らしいにも程がある。
上目遣いになった視線に向かって「じゃあもう一個」と囁いて甘やかす。
伊野尾はやっぱり…このままがいい。
泣き虫で、甘えたなままがいい。

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