となり (ページ26)

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ベッドに潜ってしばらくしていたら
ようやくうとうと瞼が落ちた時、不意に寝室の扉が開いた。
薮、かな。
ふわふわとした気持ちになって
また目が冴えてしまった。

「…寝た？」

優しい問いかけにちょっと悪戯したくなって、
目を瞑る。
そっと後頭部を撫でる指。
もうちょっとだけ、近づいたら。
そう思っていたらすぐに離れて。
寂しさがまた顔を出す。

今後ろを向いて薮に抱きついたら、
間に合うのかな。
タオルケットを少し握りしめて振り返らなかったのは、迷惑かもしれないと思ったから。
ほら、
今日は友だちと過ごしたいからリビングで寝るわけだし。

「……慧」

「……っあ」

ぎゅう、と今度は腕に捕まった。
驚いて声出しちゃった。
ピタリと動きが止まったのは多分、
俺が寝てると思ってたからかな。

恐る恐る振り向くと、まだちょっと酔っ払った薮が
俺の頬をそっと撫でた。

「起きてたの」

「うん…」

体温高い。
目尻垂れてる。

ついつい嬉しくなって、
薮の腰に同じように腕を回した。
そしたらカプリと唇を奪われて、
こってりと絡んでいく舌先。
苦いビールの味。
またちょっと飲んだのかな。

「……なにその顔」

「…さ、さみしい、かお」

「え？」

いいよね、スイッチ押しても。
結構…我慢したし。
困ったように唸る声に反して、
またぴったり身体を引っ付けた。

薮から知らない柔軟剤と煙草の匂い。

雑魚寝する子たちの中に女の子もいたこと、
ちゃんと俺見てたもん。
こっちに来たってことは、
そういうことだってなんとなく俺にもわかる。

「あのさ、そういうの…」

「………だめ？」

「ああも…なに言ってんの、ほんと」

薮の顔がすっかりおとこのひとになる。
この瞬間だけは他の人に知られたくない。
俺だけの特権だって、

「あ、まって…もう一回チュー…」

「むり」

「ふぇ…っ」

教えて？

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