となり (ページ25)

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どこかツンとした言い方と、
眉間に寄ったシワ。
その割にほんのり赤くなった耳朶が可愛くて…
思い出し笑いを誤魔化すように
湯船に頭まで浸かる。

最近少しだけ薮の照れ隠しとか、
俺を思っての行動なんかが分かり始めた。

「……」

断る意味で布団ないよって言ったつもりだったんだけど、言い方が下手くそだったみたい。
薮の友だちだし、遠回しに言うのが良いと思ったんだけど押しの強さに完敗。
寝る時くらい、ふたりが良かったのに。
ほら、だって。
夏休みの予定だって立てたかったし。

「…いちゃいちゃ、したかったし」

湯気の中に独り言が響くもんだから、
ブクブクと泡を立てて目を瞑る。

ちやほやされて、薮のこと答えたの。
ちょっとは浮気とかの予防になるかなって思って
調子に乗っちゃったからかな。
あんまり他の人に話すこともないし、
嬉しくなったのも良くなかったのかも。

でも、

ゲームの時のやぶ。
ちょっと焦ってて、
お酒臭くて、
体温がジンと熱くて。

「…ふふ」

なんか可愛かったんだ。

…そんなこと言ったら怒るかな。
頬がつい緩んでしまうのは、ポスンと背中がベッドに沈む感覚がしたせい。
アルコールの魔法があれば、
たぶん、いつもよりちょっと大胆なことに……

「な、なんちゃって」

なったら、困るし。
今は、だめだし。

もう一回だけブクブクしてからお風呂から上がった。
夏の暑さもあって、また汗をかいてしまっている。
もう一回シャワーを浴びてから上がろう。

『けいくんさ、薮と何回くらいすんの？』

『へ？』

『えっち、週に何回すんの？』

下世話な質問にじわじわと身体が熱くなったものの、後ろにいる薮は女の子の声に優しい声で答えていて。
こういう時、いつも助けてくれてたんだなって。
そんなことを思ったりして。

『秘密、かな』

『えー、教えてよ。減るもんじゃないしさ』

初めては？
薮なの？
それとも別？

肩に寄りかかる体温と、お酒のにおいと
見知らぬ香水が混じった息。
フルリと怖くて震えた背中。
そしたら隣にフラリと千鳥足で来たから。

ああ、なんにも怖くないって。
すぐに心の中が優しくなって。
…確かめたくなった。

「……」

テーブルの下で触れた指先。
あの時の感触を思い出して眠るしかないのが
悲しくて。
慌ててパジャマを着た。
物理的に遠いならまだ諦めもつくのにな。
…こんなにも近いのに触れちゃ駄目なんて。

痛くなる胸を見ないフリして
真っ直ぐベッドに向かった。

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