となり (ページ21)

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うつらうつらとした昼下がり。
あの夜は泣き終わったらすぐに寝てしまって、
ぼんやりと鏡を見たら目が少し赤くなっていた。
週末もシーツを洗いながらぽっかり穴が空いたみたいで。

虚しさも寂しさも、埋められたどころか加速してしまったかもしれない。

午前中に返せなかったメールをもう一度見直して…

「先輩、この設計図見ていただけますか？」

「あ…うん」

「…あの、どうかされましたか？」

「へ？」

「いや…ぼーっとされてるので」

自分でも自覚してるくらいなら、当たり前だけど
周りからもしっかりバレてるみたいだ。
「大丈夫」と言うと微妙な顔を返されて、
やっぱり理想の大人からは程遠いなと思う。

「…うん、昨日の指摘の手直し出来てるね。
完成予想図と一緒にメールで送ってあげて」

「はい、分かりました」

ぺこりと頭を下げて席に帰るけど、
彼はまだ俺をチラリと見るものだから、思わず

「なに？」

と聞いてしまう。

「あっ、いえ…その……なんでも」

「そう」

穏やかに微笑んで俺から逸らす。
気遣い屋の彼は、一度薮と出会っていた。
丁度スーパーに買い物に来ていたところに出くわして、手を繋いでるのを見られてしまった。
そしたら『俺も…恋人男なんです』と翌日こっそり教えてくれたのだ。

「あの、伊野尾さ…」

「高橋ー、ちょっと」

「あっ、はい！」

そういえば、まだ一緒に住んでないんだっけ。
初々しいふたりの話を聞いていると、
あの頃の自分たちと重ねたりして。

ふふ、と思わず頬が緩んだ。
少しづつ、少しづつでいい。
まだ追いつけない、なんて思わなくても
薮はちゃんと帰ってきてくれるから。

「……うん」

大丈夫、あとちょっと。

カタカタとタイピングをする音がようやく耳に届いた。ここに居るようでいないような感覚が薄まったのだ。

「高橋くん、」

「っ、はい」

「ありがと」

「え？」

同じように笑ったつもりだったけど、
なんだかほっとしたような顔を返されたのを見て
少しだけ恥ずかしくなった。

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