となり (ページ20)

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「じゃあ、宏太…も」

『ん？』

「帰ってきたら、キス、してね」

『…ああ、分かった』

キスだけじゃないこと、頼めばよかったかな。
それは終わってから思ったことで。
この時はそんな余裕なんてどこにもなかった。
スマホをスピーカーにして口元の傍に置いた。
両手を戻したら背中から汗が垂れる。

見えてるわけじゃない。
なのに、さっきよりずっと熱い。

きゅう、と唇を噛み締めても、

「っあ、ん…ぅ」

垂れた白濁のせいで、
すんなり第2関節まで入ってしまう。
下半身に集まる快感と熱。

こうた、こうた、こうた。

今度は頭の中じゃなくて、

「こぅた、こ、た…あん、ん、こうたぁ…っ」

ちゃんと声になっていた。

そばにいなくても、今なら聞こえてる。

『慧』

「こ、た…ぁん、んんっ、ふ」

『気持ちいい？』

「きも、ちい…っ、ひ」

膝の裏まで汗をかいて、名前を呼ぶ。
薮も、寂しくて嬉しい。
ちょっとは、浮気防止に…なるかな。

くっ、と指を曲げて自分を追い込む。
さっきより先から零れるのを見て興奮してしまう。
よく薮がここ触って中を緩めてるから。
…身体は覚えてるみたい。

「あぁ、んぅ…も、いっちゃう…っ、あん」

『うん…出していいよ』

「っ、こうた、こぅ…っあぁ、あん、あっ！」

腰が揺れる、2本目の指が入ってガクガクと全身が気持ちよさで力が抜ける。
目を瞑って薮の指を想像した。
ゴツゴツした細い指。
たまに気持ちいいところに引っかかって、
それで。

『慧…』

「こうた…ああ、あぅ…んっ！」

声が聞こえたら全部が全部本当に思えて、
膨らみ切ったそこからびゅくん、と白濁が飛び出た。

「っ、はぁ、はぁ…ん……」

『……』

「こ…」

『できるだけ早く仕事終わらせて帰るから…
待っててくれるか？』

「うん…」

すぐ帰ってきて、って口の中でもごもご噛み殺したら『俺もそうしたいけど』とボソリ。
また心臓がバクバクと高鳴った。

「宏太、あの」

『うん？』

「帰る時、迎えに行ってもいい…？」

『うん、着いたら連絡する』

おやすみ、で電話切って
掛け布団をぎゅっと抱き締めて目を瞑った。
ほろほろ涙が出たのを、声が漏れるのを誤魔化すため。
やっぱりどうしても、寂しかったから。

「こうた…」

今すぐ抱き締めて欲しい。
声だけで我慢しようったって、
燻った身体に残る火種は薮の腕の中じゃないと
静かにならないから。

早く、早く帰ってきて。

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