となり (ページ16)

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電話越し(yb×in) ページ16

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社会人設定
そういう描写有

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今日で丁度3日。
薮が出張に出掛けてから。
ふぅ、と小さく息を吐いたのは
紛れもなく寂しさを誤魔化すからで。

なんならここの信号待ちをしていた時に、
『ごめん、出張決まった…で、
今から出なきゃ行けなくて』
慌てたような口調まで思い出してしまう。

「…重症すぎ」

ため息と一緒に吐き出して思わず苦笑。
薮が帰ってくるまであと4日。
ガサガサと鳴るビニール袋には、
デザイナー同士の新婚さんから貰った差し入れ。
新婚旅行に行ってきたとかで、
中身はずっしり重い瓶入りピーナッツバター。
俺は今、彼らの新居のリノベーションを担当している。

…新婚かぁ……

ぼんやり浮かぶのは、薮がポツリと言った
お盆休みの予定。

『どっか遠く、ゆっくりできたらいいよなぁ』

ベッドの中で手を繋いでそんな事を言っていた。

『牧場とか、海岸線とか…ボーっと歩いたりさ』

緩くかけたクーラーがそよそよと前髪を揺らす。
豆電球のおかげでそういうことまでちゃんと見えて、ああ好きだなぁと思った。
騒がしい所はふたりともそこまで得意じゃないから
そういうところもすごくぴったり、と心の中で女の子みたいな事を考えて消したことも思い出す。

『慧は？どこでもいいは無しな』

目尻をとろりと溶かして鼻をくっつけたことも…

……ああもう

「なにしてんの、ほんと」

勝手にその時の体温まで思い出して。

ふるふると頭を振って、
マンションのエレベーターのボタンを押した。
社会に出て、それなりに歳をとって、
10年以上長く付き合っている筈なのに。
俺は少し離れただけで
ぎゅうと胸を引き締められている。

鍵を開けて部屋に入ると、ムッとした熱気が溢れた。
窓を開けるかクーラーにするかちょっと迷って、
このあと雨が降る予報だったことを思い出して冷房を付ける。

「…ごはん、今日はいっかな」

お昼、お菓子食べすぎたし。

ダイニングテーブルにピーナッツバターの瓶を置いて、仕事用の鞄も同じようにソファへ乗せてから
お風呂に入ることにした。
昼間は今よりさらに蒸し暑くて汗をかいたから。

本当はメールとか電話とかしたかったけど、
忙しさに晒されてしないまま。
俺はまだ少し、不安なのかもしれない。

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