となり (ページ2)

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「みんな初詣？」

「そう、フリー同士の傷の舐め合い的な」

「ちょっと、その言い方なしっ。女子に失礼だからぁ」

「悪い悪い、でも真実じゃん」

「そうだけどデリカシー無さすぎだから」

「だから彼女居ないんだって、こいつ」

「ばーか、俺本命には超優しいから」

きゃっきゃ、と交わされる会話。
ちょっと呆れたような不思議な薮の表情にドキドキと胸が騒ぐ。
大学の薮、こんな感じなんだ。
ぼぅ、と見つめていると不意にパーマのひとと目が合って。

「ね、いのおくん？」

「へっ、えっと…」

「もー、困らせてんじゃん。勝手にノリに巻き込んじゃダメだってば」

「そうそう、薮くんのともだちさんごめんね？」

「あ……うん、大丈夫」

ともだちさん、に

「…俺ら参拝まだだから」

「あーごめんごめん。また大学で」

「おう」

ツキリと胸が痛くなって。

「…ああ、あと」

ほんの少し鼻が痛くなったのを、

「俺と伊野尾、付き合ってるから」

薮はこの冷たい手のひらから感じたのかな。

「ともだちじゃないから、そこ訂正な」

だとしたらどうしよう。
全部全部、見抜かれてるとしたら。
どうしよう。

「やぶ、」

「うん？」

「良かったの…？」

耳が痛いくらい冷たい冬。
手を口を水でゆすいで、かみさまに挨拶する準備をする。
こんなにしあわせで良いのでしょうか。
そう聞くところから始めなくちゃ採算が合わないんじゃないかな、俺。

「うん、口にするって大事だと思うから」

「…そう」

「嫌だった？」

「…ううん、すごく…うれしい」

目尻に流れた涙を、薮はそっと親指で拭ってくれた。

「キスしたいけど、我慢するわ」

「え…」

ちょっと意地悪な顔をするものだから冷たい筈の耳まで熱くなるから。
今日は、いいよね？

「やぶ、」

「うん？…っ」

薮のくちびるはちょっと荒れてて、冷たかった。
擦り寄せた鼻頭に自分からキスし慣れてない事に気づいて少し恥ずかしくなったりして。
少し急な石の階段を登って、

「…帰ったら続きな」

「ちょっとだけ、だよ？」

「みんな帰すよ」

ぼんのう、って呟いたらぷはと笑ってくれて。

「神様には自分のこと頼まないから大丈夫」

「ふふ…うん」

視線を絡ませてふわりと微笑みあってゆっくりと両手を合わせた。
これからもたおやかに。
どうかしあわせに。
隣にいる大切なひとが笑顔でいられますように。

「…帰ろっか」

「うん」

神様どうか、お願いします。

end.