日々 (ページ10)

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眩しいくらいに輝きを増す恋人の未来。
それをいつか…
俺の存在が潰してしまうんじゃないだろうか。

長くかかってしまったレポートは、
そんな余分なことを考えてしまう馬鹿な思考回路のせいでこんなにも時間がかかってしまっていた。
圭人は知らないけれど、
本当は俺の一歩後ろを歩いていて欲しかった。
年下だから、と制限を課した俺のせいなのは分かっていたけれど。
圭人が広い世界を知ってしまえば、もう…

「俺は、いのちゃんがいたから頑張れたんだよ？」

「…そんなこと」

「ないわけないでしょ？」

ゴツゴツした圭人の両手は、分厚くて熱い。
冬の風が通じない体温はもう春を抱えている。
俺の手にあるカフェラテはもう温くなっているのに。

顔を見るのが怖くて俯いたなら、彼はわざわざそれを覗き込む。圭人の綺麗で真っ直ぐな目と正面から対峙するのを、いつから避けているだろう。

「俺は俺の為に頑張ってるけど…気持ちは最初と一緒だから」

「……」

「いのちゃんに、認めてもらうために勉強してる」

「…したごころ？」

「そう、下心」

くすりと笑った声。
出会った頃と変わらないはずなのに、
随分大人びた響きを感じて胸が竦む。
いっそ君が中途半端だったら良かったのに。
そしたらきっと、こんなにも

「だからさ、これ終わったら…その。
いのちゃんのお家に行かせてください」

苦しい気持ちになんてならなかった。

「…だめ」

「えっ！」

「…嘘、車出すから準備して」

それでもああ、圭人はまだちゃんと好きなんだって試すようなこと言って。
ホッとしたような困り眉を見て少しだけ安心したりして。

『つまらなかった？ごめんね、いのちゃん』
初めてふたりで行った動物園。
断る理由もなくついて行ったことがバレてから、
俺はずっと考えていたことがある。

大人になんてなるもんじゃない。

意地っ張りなだけのつまらない人間になんて、
気づかないで。
知らないで。
圭人はどうか、お願いだから

「良かったぁ、お土産とかご飯とか…俺いのちゃんのために色々考えてたんだよ？」

「へぇ、そうなんだ」

「もう…」

そのままでいて。

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