日々 (ページ7)

今日:13 hit、昨日:12 hit、合計:22,899 hit

ラブリー(yt×cn) ページ7

「知念さぁ、なんでまたうちの大学？」

「へ、なんで？」

「これ、うちの大学レベルだとこのレポート読めない教授たくさんいるんじゃない？って話」

「…ちゃんと添削できるいのちゃんもいのちゃんだと思うけど」

「そう？褒められるなんて久々だなぁ～」

ふにゃり、と姿勢を崩して笑ういのちゃん。
あんまり変わらない年齢で助教授してるんだから
そりゃ半端なく優秀なのはなんとなく知ってるけど。
それこそうちの大学じゃなくても、と思う。

先にレポートのざっくりした概要と
集めたデータの集計を渡して変なところがないか
見てもらいにいのちゃんの住む本当は教授が居るはずの部屋。
きちんと整理されてるように見えて、
よく分からない外国の置物が色んなところに点在しているのは、いのちゃんの趣味ではないらしい。

「まぁ、変わらずすごくいいと思うよ。
上がってくるレポートが楽しみって感じかな」

「ありがとうございます、失礼しました」

「はは、急に敬語。バイバイ～」

ヒラヒラ～と緩く手を振るいのちゃんに振り返して、僕はまっすぐにカフェに行く。
ゼミのメンバーは僕と涼介と圭人、それからゆーてぃーしかいないから手狭なゼミ室でも充分作業できるのだけれど。
ゆーてぃーからしたら窮屈らしくていつもカフェ。

僕がなんでわざわざ騒がしいそっちに行くのかって？

「……」

真剣な顔でパソコンを見つめる姿はさながら貴公子のような恋人が心配だからに決まってる。

「ゆーてぃー」

「あれ、もう終わったの？」

「うん、あっさり」

さすがだなぁ、って言いながら
片手にブラックコーヒー。
僕はお水。
設備ばかりが綺麗なうちの大学のカフェは
他の学食より割高なのだ。

「さすがだなぁ、知念は」

にこにこしてるように見えるけど、
心の中ではメラメラ。
ゆーてぃーの分かりにくい心の機微。
幼馴染の僕からすれば透けて見えるみたいだ。

頬杖をついてじっと見ると「ん？」だって。
ゆーてぃーは僕の変化には鈍感で、
そういうところが好きだったりする。

「あのね。今度下調べしようと思ってピックアップしてる美術館があるんだけど、」

「いいよ。車出そうか？」

「うん、ありがとう」

「いーえ」

土地、住居、施設。
人が暮らす土地の地質を調べて数値にしたり、
環境を伸びやかにする庭を提案したり。
うちのゼミは「人の暮らし」を題材にしていれば
なにを研究してもいい。
いのちゃんは建築学科卒業らしいし。
他にも詳しい。