日々 (ページ6)

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「こうやって来られるの」

「え…なんで……？」

「なんで、ってそりゃ」

不意に顔を上げたものだから、
ポロポロ涙が落ちてきて。
薮ちゃんはぎょっとした顔になる。

「お、おれは…う、れしかったもん……すっごく」

「いや、でも」

「ほ、ほんとだもん…薮ちゃんに平日会えたことなんてないし、4日連続で会えるなんて初めてだし、
大学だって反対方向なのにわざわざ来てくれるし、困ることなんてないもん……っ」

「あ…そう」

もにょもにょ、薮ちゃんの口がそうして動いて。
困ってるのが分かった。
言うまいと思ってたことが、
文字にしようとして躊躇った言葉が
会った瞬間弾けてぶつかった。
会った方がいいなんて嘘だ。
恋人をこんな顔にさせる俺には向いてない。

本当は飛びつきたかったとか、
このまま薮ちゃんのおうちに戻りたいとか、
このまま見たかった映画に行こうとか、
ぶちまけてしまいそうだったから。
両手で口を覆ってから黙った。
そうしなくても喉に詰まって声にならなかった。

だって、絶対嫌われたから。

薮ちゃん、言い訳嫌いだもん。

「……涼介」

「…っん、ひっく…っごめんなさ……も、もうしないから捨てな…」

「………今日だけだからな」

「っわ、あ……」

ぎゅうって、コートに押し付けられる顔。
タバコとコーヒーの香り。

「外で待つならどっか…店で待てばいいだろ」

「え……えっ」

「好きなもん、食わしてやるから…その」

続きを待つ振りをして、抱きついたら怒る？
ねぇ、薮ちゃん。
ねぇ、

「パフェとか、そういうの」

だいすき。

「……うん…っ」

だいすき。

continue…