日々 (ページ4)

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「返信、こない…」

「やまちゃん？」

「あっ、ごめん！えっとそれで？」

静かな図書館で、俺の声が響く。
圭人は眉を垂らしてくすくす笑う。
昼ごはんを早々に済ませて圭人を引っ張ってきた。
レポートの締切はあと2週間。

圭人はほとんど書き終わってるらしい。

「薮ちゃん？」

「え、あ…うん。
でも多分仕事で忙しいだけだと思うし、
なんならいつものことだし…」

「そっか」

「…あのさぁ圭人」

「うん？」

他のふたりには言ってないけど、圭人だけは昔のことを含め俺のことほとんど全部知ってるから。
くだらないって笑わないし。
俺みたいなのにも優しい。

「圭人も恋人年上じゃん、どんな感じ？」

「どんな感じって？」

「ほら、LINEとか頻繁にすんの？
電話とかメールとかでもいいけど」

「うーん…あんまりしないかな、会って話すほうが相手の顔も見えるし」

「ふぅん…」

「ほら、年上の人って隠すの上手でしょ？
声とか文字だけだったら本音みたいなのも良くわかんないし」

「…ああ、うん」

本音……。
俺、薮ちゃんと会って話しても
全然分かんないから。
そうして飲み込んだ台詞は思ったより鉛みたいに重くて、数ミリ地面に身体を沈めた。
まだちょっと怖いんだよね、
薮ちゃんの本音を聞くのが。

聞いたらたぶん……

「やまちゃん、大丈夫？」

「あ…ごめん」

「顔色悪いけど…保健室行く？」

「いや、全然大丈夫だから。
それよりレポート！レポートのテーマ決めないと
それこそいのちゃんに殺されるんだってば！」

「う、うん、分かった」

いのちゃん優しいからそこまではしないと思うけど…と苦笑いをする圭人にホッとする。
あのふたりと違ってちょっと鈍いところも
俺にとって都合がいい。
この胸の引っ掛かりは…少ししたら無くなるだろう。
忙しくしていれば、その内すぐだ。

「あー、その日バイトだわ」

「俺空いてる日そこくらいなんだよね、
知念とか裕翔は？」

「…あの二人には無理って釘刺されてるから……」

「ふふ、そっか。じゃあ電話して？
できるだけ折り返すようにするから」

「まじでありがとう…」

「うん、じゃあ俺そろそろ」

「あ、圭人。頑張って」

「ありがと」

最近圭人は何かと忙しい。
ゼミと英語学習、それから留学の説明会。
そっちの方のレポートも有るらしくて
朝しか会えないのだ。

手を振り向かうのは違う学科の男女グループ。
圭人は俺と違って友だちが多い。

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