日々 (ページ14)

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ふんっ、と息をついてから
知念は追走する隣の車を見つめる。
どうやら俺はまた恋人としてつまらない、を重ねてしまったらしい。
気をつけては居るのだけれど、
学生時代は殆ど勉強に時間を費やして居たものだから「恋愛的な駆け引き」やら「恋愛的な接し方」はほぼ何も知らずにここまで来てしまっていた。

『大丈夫、僕ゆーてぃーのことなんでも知ってるから安心して』未だ知念のリードを許しっぱなしなのは、完全にそのせいだ。
でも、この台詞には俺も同意見。
だって、その逆の事も言えるから。

「……お腹空いた」

「え？」

「ラーメン食べたい」

ほら、きた。

なにその提案、ワガママだなぁ。
突拍子もないこと言うなぁ、なんて
他の人は言うかもしれないけれど。

「…夜中に食べたら太るよ？」

「だって、ストレスになるよか良いでしょ？
後ろで寝てるみんなより起きてる僕達が贅沢したって罰当たらないと思うし」

俺には知念が本当に言いたいことが手に取るように分かる訳で。
簡単に訳すと…
休憩もせずに車を運転している俺のことが
気がかりだったのだろう。
お腹が膨れたら人間、自然と眠くなる。
無理して朝に着かなくったって構わないから、ね？

って、聞こえるんだ。

知念は続いてちょこん、と俺の袖を引くと
「そこのサービスエリアがいい」とまで言う。
相当心配させていたらしい。

「豚骨」

「醤油か塩」

「半分こしよ」

駐車場に着いてすぐ、鼻を擦り合わせて音のない口付けを交わした。
そう言えば、皆が居るから知念に触れることも
無かった気がする。

「ね、僕嘘ついたの分かった？」

「うーん、どっから？」

「…明日じゃないとことか」

「えっ」

「……」

珍しく言い淀む唇が可愛い。
これも言わない方がいいかな、うん。
だってさ、言葉よりなんとやらって

「んっ」

…言うし？

「ゆうと、もういっかい」

「ああも…出るの遅くなっちゃうよ」

「いいの、みんな寝てるし。
どの朝か分かんないよ」

「はは、それは酷いな」

にかいめさんかいめ。
それが終わってようやく外に出た。
春と言えどまだ寒い。
手を繋いでラーメン啜って、
星を見てからお家に帰ろう。

「朝ごはんも買っていこ」

「いいね、コーヒーあったかな」

勿論レポートも忘れずに。

end.