日々 (ページ13)

今日:10 hit、昨日:12 hit、合計:22,896 hit

ハイウェイ(yt×cn) ページ13

春休み。

課題という名前のレポートは、
相変わらずいのちゃんの采配で中々の代物。
題して「知らない土地」
めちゃくちゃざっくり。
自由度は高めの癖に、レポートの枚数は
いつもの数倍ときたものだから…
気合いを入れて取り組まなきゃまずそうだ。

折角だし旅行も兼ねたらいいんじゃない？
圭人、最後の春休みだし。
温泉いいよね。
いいねーでも車どうする？
レンタカー？あっ、新幹線とか。
日帰りに新幹線はどうなの。
なんてことを相談し合ってたら、
何故か車を貸してくれると言ういのちゃん。
『行きの運転ならしてあげるから、
帰りはじゃんけんで決めといて』

理由は分からなかったけど、
たまたま行きたかった場所のかもしれない。
功を奏した！と思っていたら
案の定じゃんけんに負けるのが俺だ。

「ゆーてぃー、ガム食べる？」

「あ…うん。ありがと知念」

真っ暗な高速道路に点々とバックライトを付け走る車。
春休みと言えど、今日は平日。
渋滞は無さそうだ。
手のひらに乗ったブラックガムを口に入れ、
ふぅ、と息をつく。

「ねぇ知念」

「なぁに」

「眠いでしょ、気使わなくていいからね」

「僕夜更かし得意」

「そうかもしれないけどさ」

知念がこう見えて誰よりも気遣い屋で優しいことを
俺はよく知っている。
末っ子で甘え上手だから勘違いする人の方が多いのだけれど、そのさり気なさに未だに時間差で気づいて慌ててしまう。
ああでも…そうして気づけるのが自分だけ、っていう勘違いをさせてくれるのも知念らしいのかもしれない。

「ゆーてぃー」

「うん？」

「明日、お家行っていい？」

「あー、うん…いいけど」

「僕よりレポートと浮気したい？」

「いや、そうじゃないけど…」

このまま一緒に帰ろって言ったら…嫌？って口をついて出そうになって思わず押し込める。
知念は未だ、高校時代に呼ばれてた
俺の通称「王子」というあだ名を信じている所があるのだ。
がっかりされたくない。

「知念疲れてないかな、って」

「ゆーてぃーの方が疲れるでしょ？」

温泉の効能によって艶々になった君の肌に早くキスがしたい、なんて言ったらきっと鳥肌モノだろう。
知念の瞼とまつ毛は興味深そうに俺の横顔を見つめているからフルフルと首を振って煩悩を押し返す。

「いや、うん…そうかもしれないけど、うん」

「さっきから全然会話になってないし」

「うっ、ごめん…」

「もう」

.