日々 (ページ2)

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言葉にはしてくれないけど、
ちゃんと想ってくれてるのは分かるから。
俺もできるだけ、そういうことはねだらない。

「……ぁ」

そうだ。
今日の朝撮った……

「やま何見てんの？」

「えっ！！いや、なんにも…っ」

「面白いやつ？俺にも見して！」

「ちが、あの」

「…おじさんの寝顔」

「ちょっ！知念プライバシーのしんが」

「僕から丸見えだもん。
しょうがないでしょ」

そこ、静かにー。
間延びした先生の声に慌てて教科書を開く。
メモさえ取ってない俺のノートは、
この授業だけ真っ白だ。
月曜日、週明け。
また1週間会えないからリセット。
そういう都合のいい言い訳を唱えて、
待機画面だけを盗撮した寝顔に設定した。

「…どこがいいんだか」

「…ぜんぶ」

「あーそう」

知念のいとこが、今の俺の恋人。
接点もない場所で、本当にたまたま出会ったのに。
まさかこんな近くにいたなんて思わない。
どうしても、脳内お花畑の俺から言わせてもらえば運命としか考えられない。

寒い冬。
高校生になってはじめての冬。

近所に住む大好きな先輩に片想いがバレて、
「は？気色わりぃんだけど…」
この一言でズタズタになったあの日…

「やま、ゼミのレポート終わった？」

「まだ…テーマさえ決まってない」

「やばいじゃん！大丈夫なの？」

「ゆーてぃー手伝ってくれない…？」

「前手伝った時、
いのちゃんに見つかったからアウトでしょ」

「だよなぁ……いのちゃん風邪とか
かかんないかな…」

「いのちゃんひょろひょろだけど
身体丈夫だしお休み望むのも厳しいかもね」

暇さえあれば海外旅行へ飛び立つ教授。
このゼミ楽でいいかも。
そう思って選んだらそのサポート役とも言えるいのちゃんこと助教授の伊野尾先生が、これまたしっかりした人で。
『テキトーなレポートは即落第だから、心してね』
ゼミの時間は基本放任主義でも、
中途半端な課題には手厳しくも丁寧な書き込みで
真っ赤にしていく。
もちろん俺のは毎度真っ赤っか、だ。

「知念のはいっつもサラッとしてんのにさ？」

「僕気に入られてるから」

「ちぃのは特別丁寧だからだよ。
テーマも毎回面白いし、
やまちゃん読んでみれば？」

「…難しいから最後まで読めなかった」

「残念な涼介」

ジロっと睨めば耳の端っこを赤くした知念さん。
直接言ったことはないけど、ゆーてぃーに褒められるといつもかわいい反応。
俺には悪態のほうが多い癖に。

「圭人頼ろ…」

「謝ってからね」