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「だめ?」


身長差のせいで完全に上目遣い。
長身相手にお願いする方法が効果的過ぎる。

それ、ほかの人にもしてるの?


「しゃーねーなぁ、分かったよ。
じゃあAでいこ」

「えへへ、よろしく」

「ったくさぁ、お前も意地悪いよな。
元からAで突き通す気だったんだろ?」

「正解」


そういうずるい魂胆を感じさせない笑顔で高木さんを見つめる山田さん。
で、高木さんはそれはもう優しい笑顔で見つめ返す。


「あの…では次は先方を交えてのプレゼン
テーションに入りますので、それまでにCMコンセプトを固めて行きましょう」

「分かった、また連絡して」

「はい」

「ね、俺も行っていい? 広告と誤差が出ないように知っておきたいから」

「あ、はい…分かりました」


こんなことでいちいち勘ぐって、ぐるぐる考えて。

山田さんは俺より年上だし、この容姿ならきっと俺より経験豊富だろう。
だからこそ落ち着かない。
もし高木さんが違う意味で見ていたら?

そうしたら俺は、ちゃんと立ち回れるのか。
年下であるが為に山田さんに鼻で笑われるような
醜態をさらしたくない。


「じゃ、俺他の仕事で呼ばれてるから。
山田、コーヒーありがと」

「メールで写真送るね」

「りょーかい」


フリフリと片手を振りながら高木さんは出ていく。

俺も、と立ち上がると僅かに触れる視線。
綺麗な飴色に引き止められると自然と座り直してしまった。


「裕翔くん、さ」

「はい」

「怒ってる…?」


反応を伺うように最後の声は尻すぼみ。
なんとなく俺の気持ちが漏れていることが知れて
いる事実にドキリとしてしまう。


「いえ…どうしてですか?」

「なんか、なんとなく…」


山田さんは感受性が豊かなせいか、
人の反応には過敏なのかもしれない。
あまり納得していないのかじっと俺から目を離さない。

男からすれば、
小さな独占欲が広がってしまう仕草だ。


「俺、まだ営業の仕事残ってるんで
会社戻りますね」

「あ…ごめんね、変なことで引き止めちゃって…」

「いえ、こちらこそ勘違いさせてしまって
すみません」


息を吐いて大人の仮面を一つ被った。
思わせぶりな天然小悪魔に対応するにはそういう手段も必要なのだ。


「裕翔くん、今日は何時くらい?」

「……定時で帰ります」


玄関先まで来て首をこてんとさせながら
その殺し文句はさすがにずるい。

仕事を忘れて軽くキスをすれば
へへ、と照れたように笑うものだから早々に退散したのは言うまでもない。

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らら(プロフ) - 2番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです!中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しめじ | 作成日時:2017年10月20日 13時

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