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「むり、とまら、なっい…もん」

「……ごめんな、ありがとう」


俺のことを好きになって、
宏太はその人のことを全部忘れようとした。
何も知らない俺といると、とても心が落ち着いた。


「…俺、涼介に」

「もう、謝らなくていい、って…なんかい
いったら、分かんだよ…っ」

「……でも、ごめん。裏切った。酷いことした」


そんな中、鳴った電話。


「わかった、から……もう」

「…ごめん」


宏太に掛けたのは彼のお母さんだった。

病状はやはり悪化していたらしい。
どういう状況なのか、それを知られるのが嫌だったその人が、返事をわざと書かなかった。

それほど宏太の生活を想い、
彼の放っておけない性格もよく分かっての判断
だった。


「ふふ、宏太ないてら」

「あー、っも。お前の泣き虫うつったわ」

「……でも、よかったね、
ほんとに…さいご、にあえ、て……っ」

「……ああ」


パジャマの袖で涙の拭きあいっこ。
ぐしゃぐしゃになってしまう宏太の顔。
会いたかったもうひとりのあなた。


「この部屋、すきにしていいから」

「…え、でも」

「俺の荷物も、捨ててくれていいし…
あ、持っていって欲しかったら教えて」

「わかった、ちゃんと整理しとく」


泣き疲れて瞼が腫れた瞳と涙に濡れた睫毛。
きっとふたりとも同じ顔してる。


「…宏太、ありがとう」

「俺こそ……涼介、本当にありがとう」

「帰る前に、映画見に行こうよ」

「…ああ、行こう。レイトショー」


恋人繋ぎをして、最後のキスをした。
俺と宏太はようやく羽根を見つけた。

この部屋から出るため、そして
この先を生きるために必要な羽根を。


だからこそ、


朝が来るまで悲しみから彼を解放してあげたい。

この先をひとりで生きなければならない時間が
始まるまで目を閉じたその世界で
その人との思い出を見て。

どうかこの夜だけでもふたりだけにしてあげたい。


神様、


彼の口から

ほろりと零れた




「……けい…………」




その人の名前は、

聞かなかったことにするから。



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らら(プロフ) - 2番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです!中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しめじ | 作成日時:2017年10月20日 13時

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