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「上がりました」
「…おいで」
ベッドサイドの明かりがひとつ。
オレンジ色にぼう、と寝転がる宏太を照らす。
そっと近づくと両手を広げてくれるものだから、
そのまま潜り込む。
シーツ、替えておいて良かった。
布団、干しておいて良かった。
「それで？」
「うん…聞いてほしい事があって」
「…うん」
宏太はすっかりやせ細ってしまった。
俺がずっとご飯の管理をしている時はもっとふっくらしていたのに。
胸の傍から見上げると、また笑ってくれる。
「俺、田舎に帰ろうと思う」
「……そう」
晴れやかな顔を見て、つられて笑った。
そんな気がしてた。
俺から離れて、
踏み出す力が湧いたんだ、って。
「向こう行ってもさ、花はあるから」
「うん、ここより絶対たくさんあるよ」
なんで俺を置いていくの、とかそんな事
思わなかった。
だってそう決めた理由、今なら分かるから。
「…死んだんだ、あいつ」
「………うん」
「昨日の夜、俺の手握ったまま」
宏太が夜な夜な出かけていた場所は、
「……っ」
「なんでお前が泣くんだよ」
「だ、って……こうたが、っなか、ないから……」
「泣いたよ、結構」
大切なひとがいる病院だった。
「……死ぬ前日さ、あいつ、目開けたんだよ」
幼い頃から身体が弱かったその人は、生まれた時から寿命が決められていた。
宏太のお母さんが経営している療養所に住むことになったその人は、たまたま宏太と同い年で。
「俺の顔、見た瞬間さ、口動かそうとすんの。
でも……ホースで繋がれてて声なんて…もう出せないからさ」
「…なん、て？」
「…………すき、だって」
年中ベッドの上、月に1度だけ外に出られるだけ。
ただの風邪でも治りが遅い。
いつも1人だったその人が、
おしゃべり好きで穏やかな宏太と出会って、
想いをつのらせて。
「…っひっく……うぅ」
「ごめんな、湿っぽい話して」
「ううん、うれしい、っく…教えてくれて
ありがと…ぅ」
でも、その人の病状を想った両親が広くて薬の流通も盛んな大きな病院にうつす事を決めて、
それから、ふたりは離れ離れになってしまった。
「こう、た」
「…ん？」
「お別れでき、て…よかったね……っ」
「あーもう……いい加減泣きやめ、な？」
手紙のやりとりがいつからか途絶えて、その人の両親に連絡をしても取り合ってもらえない。
傷心していた時に声をかけたのが…俺だった。
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らら(プロフ) - ２番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (
レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです！中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
ｃ(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しめじ
| 作成日時：2017年10月20日 13時
