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裕翔くんはお昼ご飯を食べてから、ひとつだけキスをしてから帰っていった。
いつも以上に澄んだ青空だ。
寒いけど、換気ついでと窓を少しだけ開けた。


「洗濯物と、洗い物、掃除して…」


プルル、プルル。


「もしもし」

『もしもし、涼介?』

「宏太…帰ってくる?」

『うん、あと2時間くらいで着く』

「分かった。なんか食べたいものある?」

『なんでもいいよ、じゃ』

「うん」


トクトク、早まる脈拍。
声が明るくて、飛び跳ねそうになるくらい嬉しく
なる。
いい事があったに違いない。
宏太に、きっと。

あの神様がまた微笑んでくれたのかもしれない。

キッチンのお皿を片付けて、洗濯機回して。
それから夕ご飯のレシピを考えながら掃除機をかけたら、テーブルをピカピカに磨いた。

夕飯の準備をしてテーブルに並べている時に、


「ただいまー」

「宏太、おかえりなさい」


あ………


「いい匂い、煮物?」

「うん、イカと小いも」

「おー」

「座ってて、後これだけだから」


宏太、笑ってる。


「他のも美味そう」

「はい、お待たせしました」

「涼介、ありがとう」


すごく穏やかに笑ってる。
何年ぶりだろう。

いつもの溶けたような柔らかい笑顔。

その顔にずっと会いたかった。


「…ううん、食べよう」

「うん」


夕飯は、どれも上手にできていてホッとする。
宏太もうまいうまいって、炊きたてのご飯と一緒に口に放り込んでいく。
暖かい部屋の温度が少しだけ、ふたりの体温で
上がったような錯覚に陥る。

そのせいか、自分で盛ったはずの料理が喜びで
いっぱいになって胸がつかえて食べられなかった。


「宏太、お風呂先どうぞ」

「ああ、うん」


片付ける俺の頭をくしゃりと撫でて、バスルームへと向かった。
節ばった手のひらの感触に触れられたところが熱くなる。


「ふふ」


こんな日が来るなんて。

嬉しい気持ちでいっぱいなのに、また涙が出そうになった。

…裕翔くんに、報告しなきゃ。
それで、優しい彼がしあわせな方向に進めるよう
握った手を離さなきゃ。


「お風呂ありがとう、先ベッドいるな」

「うん、待ってて」


同じシャンプーの香り。
宏太に似合う清潔感のある爽やかな柑橘系。

あなたの雲を晴らした原因が知れるといい。


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らら(プロフ) - 2番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです!中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しめじ | 作成日時:2017年10月20日 13時

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