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広いベッドだった。
白くて清潔な、そして柔らかな羽毛布団。
泣いて震える山田さんは、やはり白くて滑らかな肌をしていた。
その男はきっと、激しく揺さぶることしか脳がない。腕のあざを見る限り、きっと。
だから、驚くほど丁寧に触れた。
指先から足まで全部、ところ構わずどこまでも。
優しく身体を繋げた。
山田さんは、従順に俺を受け入れて。
慣れた身体に魅了されたのは言うまでもない。
だからこそ、彼は無垢なまま。
俺の前に居続けた。
「…おはよう、裕翔くん」
「…おはようございます」
強い白は、
「なにか飲む?」
即席の黒に負けることなどないのだ。
「山田さん」
「うん?」
「…どういう人なんですか、その人」
朝日に透けた様に光る茶髪と、そこから覗く瞳。
胸に閉じ込めて見えないようにしたずるい俺。
それに構わず答える
「俺の恩師。生きる道を教えてくれた、大切な人」
「…へぇ」
「美しい世界をね、見せてくれるひと」
優しい声。
「離れようって思わないんですか」
「…うん、思えない」
「どうして?」
「この部屋、パソコン、それから…このベッドも
全部あの人が買ってくれたんだ。
俺が持っていけるものがあるなら…紙と鉛筆、
服くらいかな」
力が入らない右腕を俺の腰に軽く引っ掛けて、
息をする。
「この部屋、すごく気に入ってるんだ。
それに……離れる理由、無いでしょ?」
「俺からすれば大ありです」
「そうかもね、普通に考えたら」
「……」
「でもね、俺すきなんだ。その人のこと」
誰よりも。
愛おしそうにそう言うと、山田さんは
甘やかに微笑んだ。
羽根をもがれた天使が彼ならば、俺はそれを拾う農夫といったところだろう。
神様であるその人を想う時、いつも俺の知りえない場所まで空想を巡らせる。
その羽根を、俺は探しに行くのだろうか。
それとも…
そんなもの初めから無かったのだと言い聞かせてしまうのだろうか。
end.
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らら(プロフ) - 2番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです!中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
c(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しめじ | 作成日時:2017年10月20日 13時