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「お風呂、ありがとうございました」
「うん」
目元が赤い。
俺が湯船に浸かっている間にもきっと泣いていたのだろう。
山田さんは肩から力が抜けるように穏やかな表情をしていた。
テーブルにはしっくりと出汁を含んだ大根とちくわにじゃがいも。
お茶碗にこんもり盛られた白米と、
サラダがひとつ。
家庭的な香りがこのスタイリッシュな部屋に似合わない。
「山田さん」
「ん？」
「服、ありがとうございます」
「ううん。それ、返さなくても大丈夫だから」
「……」
どうして俺のサイズに合う服があるのか。
口から出そうになった疑問は、大根を口の中に入れて阻んだ。
このワイシャツもスラックスも下着まで。
全部新品のままそこに居た。
やっぱり、山田さんの隣には…
「裕翔くん？」
「すごくおいしいです。
おでん、2日目の方が得した気持ちになりますね」
「…よかった」
濡れているはずのハイネックのまま、山田さんは緩やかに微笑んだ。
雨音はまだ強く、ビシビシと窓を打つ。
滝の中に居るみたいだ。
そして、ふたり。
取り残されているような気持ちになる。
「…明日も来ますね」
「え」
「今日は、ゆっくり休んで下さい。
資料も車に置いたままなので」
俺は全部、気づかないフリをした。
山田さんから見ればただの他人で、仕事相手で。
だからこそ、深入りすべきでは無いのだ。
でも
彼の震えた身体を抱きとめた時の感触は、
未だに胸の中、皮膚にこびり付いて離れない。
「……ごめんなさい」
「なにがですか？」
「…っ」
「資料を持ってこなかった、俺のミスです」
山田さんの瞳がクルクルと回って不安定に揺れた。
俺が駆け引きさえ出来ない男なのだと思っていたのだろうか。
それとも、なにも気づいてないと思っているのだろうか？
他人の気配なんて、どこにもないこの部屋に
山田さんが勝手に俺の前でボロを出しているのに。
それがわざとじゃないなら、一体なんなのか。
「雨、止みそうですね。帰ります」
「あ…まだジャケット乾いてない、よ」
「じゃあビニール袋貸してください」
「うん、分かった」
この胸の締め付けられる感覚は、しばらく止みそうに無かった。
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らら(プロフ) - ２番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (
レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです！中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
ｃ(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しめじ
| 作成日時：2017年10月20日 13時
