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窓を打つ雨粒の大きいことこの上ない。
上階にある山田さんの部屋はさらに危なっかしい
気がしてしまう。
籠城のお姫様は、果たして傷ついたままひとりで
居られたのだろうか。
今日はハイネックの黒と黒のベロア素材のゆったりしたパンツ。
色をまとわなくても彼は存在感をそこに放っている。
目を惹き付ける、それなのだ。
「はい、コーヒーで良かった？」
「ありがとうございます」
「お風呂今沸かしてるから、沸いたら入っておいでね」
「ご迷惑お掛けします」
「いーえ」
濡れきってしまったワイシャツが身体に張り付いて気持ち悪い。
ジャケットは山田さんの指示の元、玄関に吊るされて水滴を地面に落としていた。
タオルを敷いた椅子に腰掛けて、俺はただ
忙しなく俺のために奔走する山田さんを見ていた。
「裕翔くん、お腹減ってない？」
「あ…はい、お昼まだなんで」
「じゃあ食べていく？
俺の手作りで申し訳ないけど」
「…いただきます」
必要最低限の言葉しか、今の俺からは望めない。
もし山田さんがスイッチを押してしまったら。
もう後戻りなんて出来ないから。
「昨日の残りになっちゃって申し訳ないけど」
「全然、大丈夫です」
「ごめんね」
またそうやって、笑うんですね。
俺に向かって綺麗に。
「謝らないでください。手料理、嬉しいです」
「……裕翔くん」
「はぁ…ああもう、あなたは気にしすぎです。
俺のことも、何もかも。
素直に笑ったり、泣いたりしてくれたほうが…」
「…っひっく」
あ………
「ごめんなさい…変なこと言いました、その……」
「ううん、こっちこそ…っ」
震え、涙を流しながらも、
彼は微笑もうとしていた。
自然と立ち上がり、俺はキッチンにいる彼を抱きしめていた。
濡れた肌にビクリと山田さんの身体が反応して、
それでもすぐに俺の腰にゆるりと回った白い腕。
恋人じゃない誰か、なのだろうか。
それとも、有岡先輩がついた嘘なのだろうか。
「ゆ、とくん…」
「無理に笑わないで下さい、お願いですから」
山田さんは、とても温かかった。
きっと冷えた身体のせいに違いなかったけれど、俺はただその熱さに身を焦がした。
「ありがと…」
「…いえ」
甘い花の香りがする。
山田さんが使っているシャンプーのそれに
違いない。
湯船が満たされたという音が鳴って、離れた俺は
白い頬に流れていく涙の川を見とめた。
やっと見られた美しさに、頭が痛い。
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らら(プロフ) - ２番目の恋人、すごく大好きで、繰り返し何度も読んでいます。今回、その後の話が読めて嬉しいです。恋人になってから時間がたっても、敬語で話す裕翔くんが可愛いです。次回作も楽しみにしてます。 (2018年5月15日 13時) (
レス) id: b61be20377 (このIDを非表示/違反報告)
あわび(プロフ) - ゆとやまは正直いままであまり興味がなくて、スピンオフのやぶいのから読ませていただいたのですが良すぎて本編も一気読みしてしまいました。結果ゆとやまにハマりそうです、笑。しめじさんの心の描写が大好きです。素敵な作品をありがとうございます。 (2017年11月2日 10時) (レス) id: fe63f96f9f (このIDを非表示/違反報告)
あさ(プロフ) - こんばんわ。いつも楽しく拝読させていただいております。ゆとやま大好きなので、このお話大好きです！中島くんと山田くんのその後のあれこれ、続きを楽しみにしています。 (2017年10月28日 19時) (レス) id: c8480f472b (このIDを非表示/違反報告)
ｃ(プロフ) - はじめまして。とても良かったです。一気に引き込まれて最後まで読ませて頂きました。ずうずうしく申し訳ございません。その後の2人が読みたいです。ざっくりで申し訳ございません。次回作も楽しみにしております。 (2017年10月23日 23時) (レス) id: 3234dce174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しめじ
| 作成日時：2017年10月20日 13時
