朝にはもう貴方はいない【太宰治】

28話 ページ30

2人と別れ、私達はそれぞれの部屋まで歩いていた

「明日から長期任務だね」

「そうですね、私がいない間に大怪我なんてしないでくださいよ？」

「努力するよ」

その返事はやはりいつもと違う感じがした


「…今日はどこか寂しげな顔をしてますね」

「そうかい？
君と少し会えなくなるのが寂しいのかな？」

「酒屋の時からずっとその顔ですけど？」

そう言った瞬間、少し太宰幹部の表情が崩れた気がした

「…君って観察力あるよね」

「話を逸らさないでください、何故そんな顔をしてるんですか？」

「怖いのだよ、どこか心地よい時間が無くなる気がしてね」

心地よい今の時間が無くなる怖さを私は知っている

孤独の怖さも…

私は太宰幹部を抱きしめた

「！？…どーしたんだい？」

「そんな顔をする上司を慰めているんです」

「…君はいつだって優しいね」

それは貴方が好きだからですよなんて、言えないけど

「長期任務なのにそんな顔したままの貴方をほっとけませんから」

「ふふ、そうだね
ありがとう」

やっと笑った彼を見て、私も微笑む

すると私の頰を撫で、優しく微笑む彼と目が合う

その笑みに鼓動が高鳴る

唇を重ね、ゆっくりと離れた

「おやすみA」

初めて抱き合う時以外に名前を呼ばれた

嬉しかったのに

「おやすみなさい太宰幹部」

この名前を呼ばれたのはこれで最後になった

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