‐prologue‐ ページ1
生まれたときから親なんていなかった。
気がついた時には沢山の兄や姉、弟に妹がいた。
仲は良かった。互いに支え合わないと行けないような不自由さだったからだ。
外には家族というものがあるらしい。それは幸せなもので安心出来る、自分の居場所であるらしい。
この場所を居場所だと言うのであれば確かに私たちは家族であるのかもね。
それが何を意味するのかも何も分からないような、義務教育にも恵まれていない。
「おい、今日はお前だ」
はい
家族だと仮定すればあの男は父親になるのかな。逆らっては行けない大黒柱。いや、私たち家族を支配する1人の役人に過ぎない。
何も言えない。何かを言い返すなんてできない。
呼び出された声に導かれ後ろをついていくような毎日。今日は機嫌が悪いからまた手当してもらわないとだな、なんて考えながらも足が少しずつ動く。
私よりも上の兄姉はすでに親が決まっているらしい。
それも親、と呼べるようなものではないが。欲の吐き出し口に過ぎない。
ここはそんな子供を作り出すためだけの施設なのだから。
父親の皮を被った役人の小銭稼ぎの道具なのだから。
今日も躾だと、教育だと言われ、慰め者にされるのだ。
自分の意思とは関係なく火照る身体。声が勝手に溢れ出る。こうすれば、この男は喜ぶと知っている。そう教えられた。勝手に流れ出る汗と涎で涙をごまかす。
思考してはいけない。頭を空っぽにしなければ。
考えれば負けだ。自分の存在価値を。
この男にしか私を私と存在させられる奴はいないのだ。
ああ、誰か。誰でもいい。
神様なんているとは思えないが、もしいるのであれば死の神様。
あの男を、
私を、
殺してください。
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作者名:あかね | 作成日時:2024年3月13日 1時