：帰宅 ページ20
＿＿＿…
久々の我が家。
扉を開けると、安心する匂いと、何故か香ばしい匂いが鼻腔をいっぱいにした。
そして部屋の奥から、エプロン姿の愛しい家族が辰哉を出迎える。
「おかえり笑」
「ん、ただいま。」
帰ると家の灯りがついているという安心感、「おかえり」と言ってくれる家族の存在。
それらは約1ヶ月のホテル住まい、グループ間のトラブル、そして忌々しい記事などで廃れた辰哉の心を、最も簡単に潤した。
辰哉から、荷物を半分持ったAと共にリビングへ。
香ばしい匂いはキッチンからだった。
「…なんか、いいな笑」
「えぇ？笑」
「んーん、なんでもない。」
「…結依と稜哉、目黒くんの家行ってるよ。」
「知ってる。気遣ってくれたんだろ。」
「たぶんね笑」
「…ごめんな、結局1ヶ月も帰ってこれなくて。
大変だったでしょ。」
「んーん、大丈夫。稜哉達も手伝ってくれたし笑」
「…そう？ならいいけど。」
「にしてもあの記事はさすがに驚いた笑
信じなかったけど笑」
「強いですねぇメンタル笑」
「伊達に"深澤さん"の奥さんやってないですから笑」
「敵わないわ〜笑」
なんて通常運転の会話さえ、二人にとっては幸せの一つ。
なんでもないような日常が幸せ、なんてどこかの歌詞だって今はよく分かるだろう。
「晩御飯、チャーハン。」
「え、まじ？？やった笑」
「トマトスープと、油淋鶏付きです笑」
「よっしゃ〜！もう飢えてんの、Aのご飯、笑」
嬉しそうにする辰哉の顔を見て、Aも安心する。
すこし痩せたようにも見える辰哉に、自分ができる範囲で元気づけたかったのだ。
「あ、手洗ってくるわ。」
「うん、お風呂は？先入る？」
「先食べる、腹減った笑」
「分かった笑」
妙な鼻唄を歌いながら洗面所に向かおうとする辰哉に、Aは思わず声をかけた。
「あ、でもね、」
「ん？」
「あ…いや…笑」
「なに笑 なんでもないは無しよ？笑」
「…ちょっと、ね。寂しかったよ。」
思いもしなかったAの言葉に、辰哉も固まる。
「え…、」
「…なんてね笑」
「待って待ってA今の、」
「あ！先、手を洗って来てください？笑」
「えぇッ??!いや、…ッはい、
でも洗ってきたら、今のやつ聞かせてよ？！ねぇAちゃん？！」
ドタドタと洗面所に急ぐ辰哉。
彼が奏でる生活音さえ愛しいと感じるAは、今度こそ夫の分の晩御飯を作り始めたのだった。
Fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1784人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あのん(プロフ) - 彩翔さん» いつも閲覧ありがとうございます😊妹ちゃんの過保護ヒーローな長男、需要があるようで驚いております笑 今後とも宜しくお願いします！ (2021年11月17日 10時) (
レス) id: 2713eabb8d (このIDを非表示/違反報告)
彩翔(プロフ) - 移行おめでとうございます！ツンデレだけどシスコン気味な稜哉くんカッコよすぎです🥺更新はいつでも待ちますので、ご自身のペースで更新してください！ (2021年11月16日 21時) (レス) @page27 id: 36c3149a13 (このIDを非表示/違反報告)
あのん(プロフ) - なぁたさん» いつも閲覧ありがとうございます😊お気に召していただけてとても嬉しいです！楽しんでいただけるよう、少しでもまともな文章が書けるように努めます！💦よろしくお願いします！ (2021年11月1日 18時) (レス) id: 2713eabb8d (このIDを非表示/違反報告)
なぁた(プロフ) - 1日で一気読みしてしまいました､､､あのんさんの書き方すごく好きです！ご自身のペースで楽しんで更新していってください。これからも読みます☺️ (2021年10月31日 23時) (レス) @page11 id: bf7a073558 (このIDを非表示/違反報告)
あのん(プロフ) - ぴけらびさん» 温かいお言葉、ありがとうございます😭これからもよろしくお願いします！(^^) (2021年10月31日 20時) (レス) id: 2713eabb8d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あのん
| 作成日時：2021年10月31日 17時
