こもれび (ページ44)

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＊わがままms* ページ44

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さっきから何度目かもわからない欠伸を噛み締める。

隣の潤も当然それに気づいたみたいで、ツマミのナッツを瓶に戻し始めている。

「翔くん。おつかれだね？
安心して。今日は優しくしてあげるからね。」

ぽっぽっぽっ！と熱を持つ顔が情けなくて美しく縁取られた目から背けると、逃れなれないように頬を両手で挟まれる。

「んふ。」

「、んだよ、」

「かわいい。」

「、はいはい」

「信じてないでしょ？翔くんはいつもかわいいよ。寝てても起きてても、座ってても立ってても、仕事してても家にいてもかわいい。」

よくもそんな恥ずかしいことを、、。
酔っ払ってるからか？お？

「んあー！！」

「おわっ！なんだよ、」

「こんなかわいい翔くんほっとけない！
ね、いい？もともと一緒に寝る予定だったし。」

「は？え、おい！」

ぐんぐん距離を詰める綺麗な顔に襲われて唇はすぐに捕獲された。舌を絡められ、その巧みな動きに触覚を処理しきれない俺の脳みそがピリピリ痺れる。

でも、いや。
こんななし崩しみたいなのは嫌。

顔が固定され、脚は脚で抑えられ、唯一自由な手を使って胸を押しのける。

それでも逞しい体をどうこうするなんてできなくて、酸素はどんどんなくなってくる、、。
そしてついに最後の力を込めた抵抗の末、制御できなくなった俺の右手が潤の胸を上に滑り＿＿＿

バチ！と乾いた音が響いた。

「っ、いった！」

「え、あ！ごめん、」

ジンとする手に潤の頬が当たったことを知って途端に部屋の温度が２度ほど下がる。

「もういい。
翔くんのお望み通り1人で寝れば？」

「え、」

体にかかっていた重みが一瞬して消え、スタスタと寝室に向かった潤は1度も振り返ることもなくわざと音を立ててドアを閉めた。

2秒後にはそのドアが薄く開いて。

「じゅ、！」

慌てて声を出したのも虚しくドアの隙間から何かがこっちに投げ出されてすぐに閉まったのをソファーの元から眺めただけだった。

ついさっきまであんなに火照っていた体が今は切なく震えた。

ごめん。潤は真っ直ぐで純粋だから、俺みたいな複雑で、自分でもよくわからないむず痒い感情は煩わしい以外にないんだきっと。

潤からいわゆる普通の幸せを奪いながら俺の幸せを満たしてる以上、いつでも手放す準備はできていたと、捨てられてもしょうがないと思っていたのに、一瞬の諍いでさえ弱る心に自嘲した。