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ぷりぷり怒った潤はドライヤーを手にずんずん帰ってきた。
「もう、だいたい翔くんはタオルで水気を拭ききれてもないんだから、まじで体冷えるよ？
しかも俺らなんて年がら年中髪染めてるんだから、
嫌でしょ？髪きしきしになるの。」
「え、拭ききれてはいるだろ。」
「いーや。あ、ほらもう。肩濡れてるし。
はい、こっち座って。」
俺の後ろのソファーに座った潤は慣れた手つきでまず俺の髪を手ぐしで整えてくれる。
カチッと音とともに温かい風が吹き荒れてもう潤の小言も微かにしか聞こえない。
俺より少し骨ばった手。
美しい肉が付いた大きな手。
でも真っ白で。
いつもはパソコンの上を滑ったり、コンサートでは指揮棒を踊らせたり、まめで気遣いやな潤の手はいろんな人のために働いている。
でも。
今は俺のために動いてんの。
行ったり来たり、撫でたり梳かしたり。
忙しないながらも細やかな動きをテンポ良く繰り返してくれる。
潤。安心して。
俺、潤にもらったそのドライヤー気にってるの。
すぐ乾くし、にしては軽いし、きっと俺の性格とか考えてくれたんだろ。
だから、夏とかじゃなければ潤が来てる時しか濡れたままにしとかないんだよ。
絶対言わないけど。
そもそもお前風呂長ぇんだよ。
テレビもそこまで観たい番組ないし、潤と過ごせる時間にできるだけ仕事したくないからパソコンも開かないし、暇なんだよ。
俺が髪濡らして待ってるんだから早く上がってこいよ｡
「はい。乾いたよ。ヘアオイルも塗るね。」
「うん。」
潤と同じ香り。
「よ、っと。はい完成。ね、サラサラでしょ。」
「うん。ありがと。」
「今度から気をつけてね。」
「あーい。」
よし！と満足した潤はドライヤーを戻しに行こうと立ち上がり、てくてく歩いていく。
ホカホカした髪が冷めていくのが寂しくてその後ろ姿に目を這わせていると、脱衣場の前で立ち止まった潤がくるりと振り返った。
不意打ちのせいでバチッと目が合って逸らすに逸らせずにいると、潤はニヤァと形のいい口角を上げた。
「髪。乾かしてほしいなら先に言ってね。いつでも乾かしてあげるんだから。」
濡れたまま待ってるのもかわいいけどやっぱり心配なの、と付け足して脱衣場に入っていく潤を見送る俺の顔は真っ赤だったと思う。
ーfin
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作者名：すす | 作成日時：2020年11月15日 18時
