こもれび (ページ38)

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＊雨と出会いns ページ38

リーマンパロ

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はぁ。

帰宅ラッシュとまではいかないがそこそこの混み具合の電車から見える景色にため息。

雨じゃん。傘持ってないし。

でも駅に着けばザーとしてた雨がサーくらいに弱まってたから意を決して生身で挑むことにした。

幸いアパートは駅からも遠くはないし、住宅が立ち並ぶここは歩行者に優しい街の造りになっていアーチ状の屋根も所々にある。

屋根から屋根の間を小走り。
これ結構雨冷たいから帰ったら速攻風呂だな。

え？

走ってる途中に横目で何かを捉えた。
それで立ち止まってみると、やっぱり何かいて。

歩道と公園の間、背の低い垣根のとこに...人影？

少し近づいて目をこらすとシャツ姿のやつが向こう側に傘を投げ出してこちらに背を向けて蹲ってる。

やばいやつ？

そのままさらに近づいても垣根に体ごと突っ込んでる人をほっとけるほど鈍い良心じゃない。

「...あの、」

俺の声に勢いよく顔を上げたその人は濡れた前髪をかき分けてきゅうっと眉を下げた。

「あ、すみません、怪しかったですよね、」

「いえ、あの、大丈夫ですか？」

「えーと、大丈夫じゃ、ないかもしれないです、」

「え。」

雨のせいで狭められてる瞼の奥でその人の目が垣根の方に動いたのがわかった。

「あの、猫とかアレルギーないですか？」

「いや、ないです。」

「もしかして飼ってたり、？」

「そうではないんですけど、えっと、」

なんて言おうかと迷ってるうちにその人の長い指が垣根の奥をさした。

「あ。」

そこからはニーニー声がした。

覗き込むと一匹の親猫と小さな頭が3つ4つ見えた。

そいつらはちょうど垣根にささった傘の真下にいて、
黒い分厚い布に包まれている。

「この近くの動物病院調べたんですけど閉まってまして、今動物に詳しい友人に電話掛けてるんですけど繋がらなくて、」

弱々しい声。

俺も猫は好きだし、今日の気温と雨からしてこのままここに産後の猫と産まれたての猫を置いていくのも憚られた。

そして何よりこの人を放っておくわけにはいかないという強い思いが生まれてしまい。

「2人で協力してウチまで運びませんか？うちのアパートペットOKなので。」

「え、いいんですか？」

「俺も猫心配ですし。」

「ありがとうございます！」

キラキラした目を向けてくれたその人が奥に手を伸ばし、猫たちが乗っかている布ごとずりずり寄せてきて気づいた。

それ、背広じゃん。