おかえり (ページ6)

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「、離して、、。」

真っ暗な部屋にそんな声が落ちた。

「やだ。」

真面目な翔ちゃんが明日早いくせにこんな遅くまで起きてること、違和感しかなかったはずなのにね。

ごめんね、小さな照れ隠しを鵜呑みにしちゃって。

そんな気持ちを込めてぎゅっとしてみたけど、気に入らないのかもぞもぞ動く。

「離しってって、。」

「やだって言ってるでしょ？もう離さないから。」

「、違う、、。
顔、見れないの、いや、、。」

こっちだって顔は見えてないけど、きっと真っ赤な顔してるんだろうな。2人とも。

「じゃあ、一旦電気つけていい？」

少し手を緩めた瞬間にぐるんと体が回ったかと思えば
抱きついてくる翔ちゃん。

「やだ。このまま。」

「もう。顔見たいんじゃなかったの？笑」

「知らない。」

「ふふ。じゃあいいよ、このままで。」

なんてね。

ぐいっと押せば足をもたつかせながらベットに倒れ込んだ翔ちゃんはびっくりしている。

「え、和、。」

「大丈夫。今日はしないから。」

「え。」

「あれ？してほしかった？」

「いや、明日早いから、。」

「じゃ、明日ね。」

「、うん。」

俺を求めてくれるのはありがたいんだけど、どうも不器用だからなー。

「で、翔ちゃん？」

「ん？」

「どーしましたか？和相談室は今日も元気に開放中なんですよ。」

「あー、今日はですね、少し気分が落ち込んでまして、」

「あら、それはそれは。原因とか心当たりはございますか？」

「あー、はい、。」

非常にノリよく明るく答えてくれるけど、漂う切なさはきっと部屋の暗さのせいじゃない。

「んー、翔ちゃん、？言えない？」

俺の横で体を起こした気配がする。

「ちょっとね、取材内容が濃くて、。

戦争、のね。

それだけのこと。

ふふ。いつまでたってもプロになれないや。」

暗くて見えないけど、きっと笑顔なんだろう。

音としては聞こえないけど、泣いてるんだろうな。