おかえり (ページ5)

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【NS】ページ5

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もう何十回目かのあくびを噛み締める。

目の前に置かれたパソコンには書き上げた原稿が保存されているし、そのパソコンの上に置かれた進行台本でさえもう4周はした。

空のコップにはコーヒーのシミが着いて。

もうやることなくなったスマホを開いても、3:07とさっきからあまり進まない時間を照らすだけ。

今日は午前中から仕事があって、明日も9:00にはマネージャーが迎えに来てしまう。

閉じそうなまぶたにこんなにも抗ってるけれど、和に会いたい、顔を見たい、のそれだけの理由。

うわ。本気で眠い。

もう一回コーヒー飲もうと立ち上がった時、ロック解除のお知らせがあった。

嬉しくなって、眠気がどっか飛んでった自分に笑ってるとこちらに向かう足音。

「あれ、翔ちゃん、？た、だいま、。」

「ふふ。和、おかえり、！」

「電気ついててびっくりしちゃった。
どうしたの？明日だって早いんでしょ？」

「原稿書いたり、台本読んでたらこんな時間になっちゃって、」

「はぁ、気をつけてよ？
翔ちゃんはいつも仕事になると、、。」

「、うん、ごめん。ごめんね、？」

手に持ったカップはそのままシンクに出して、足早にリビングを抜け出した。

もうちょっと優しくしてくれたっていいじゃん。

まあ、素直でかわいくない自分が言えたことじゃない｡

こんなことなら早く寝ちゃえば良かった。

一応顔見れたからいっか。

どうせ見れるならあんな怪訝な顔じゃなくて、もっと穏やかな顔がよかった。

って、疲れてる和に酷なお願いだ。

お疲れ様、の一言も言えないで、。

うじうじ考えても、眠い思考はまとまらずに不満と自己嫌悪を垂れ流すだけ。

はぁ、と吐こうとした息を飲み込むことになった。

「ごめんね、翔ちゃん。」

首に回された手。

背に負う重み。

耳に感じる吐息。

「、かず、？」

「待っててくれたのに、ごめん。」

突っ立ったままの俺が戸惑ったままでいると、手は首からお腹のあたりまで下ろされた。

このままほどかれるんじゃないかと思ってきゅっと手を添えると、耳元でくすっと笑う声。

「良かった。
ひとりで泣いてないで。」

泣いてなんかないよ、と笑って返そうとしたけど、泣きそうになってやめた。