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ピンポーン
突然鳴ったインターホンの音に、小さな吐息が零れた。
今日は荷物が届く予定もない。玄関の扉の先に居る訪問者は、ただ一人しか思い浮かばなかったからかもしれない。
繭「雨やべ〜」
予想通りの訪問者は、良く見慣れた折りたたみ傘を此方に差し出し、
繭「ちょうど持ってたから助かったわ。笑」
私はやっと返ってきた花柄のそれを受け取り、風呂場のビニール傘の隣に広げた。
「傘さして来たんでしょ?何でそんなに濡れてるの?」
繭「だってここの廊下傘引っかかんだもん。面倒いから階段の前で諦めた。」
貸した傘を濡れたまま返すなんて、なんて彼女らしいのだろう。
雫の滴り落ちる髪をタオルで拭いてやれば、少し驚いたように私を見る。
繭「なになに、サービスいいじゃん。笑」
「……別に。」
ニヤリと笑うその顔は相変わらず憎たらしく、
雑にタオルを頭に投げ掛け、私はさっさと座椅子に腰を下ろした。
特に意味などない。
濡れていたから拭いただけ。
いつもと変わらずに此処に来てくれた彼女に安心したとか、罪の意識でそうしたわけじゃない。
繭「ねー、腹減ったー」
彼女の大好きな親子丼を作り、普段は入れてやらないあおさを味噌汁にたっぷり入れて出したのも、ただそんな気分だっただけ。
他に意味なんて何もないのだ。
繭「で、どうだった?高級フレンチ。」
「食べてない。」
繭「は?じゃあ何食ったの?」
「お好み焼きともんじゃ。」
繭「はー!?Jリーガーでしょ?日本代表でしょ?ドケチかっ!」
「だって、スウェットパンツにパーカーだったし。」
繭「何それ。田舎もん丸出しじゃん。」
スウェットパンツにパーカー姿でやって来た彼女とした三日前の話は、これだけ。
珍しく食器洗いを申し出た彼女のそれにもまた、特に意味など含まれていないのだろうか。
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laiz(プロフ) - 娘×2さん» 娘×2さん、はじめまして。初めから読んで下さりありがとうございます!確かに、まだ誰も「好き」とは言葉にしていませんね^ ^いつ頃その言葉が出てくることでしょう…そして初めに言うのは誰かな(^-^)続編「月白(つきしろ)」を作成致しました。是非覗きにいらして下さい (2014年10月24日 20時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
娘×2(プロフ) - 初めまして(^-^)『碧』から読み始めてやっと追い付きました!!まだ誰も『好き』と伝えてないのにキュンキュンしまくってます。続きが楽しみです♪待ってます(*^^*) (2014年10月23日 20時) (携帯から) (レス) id: d30826829b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - みいさん» みいさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<おっしゃる通り、その内亀に抜かれますね(^ ^)笑”現在編なんてサクッと好きって言っちゃえばいいのにと思いつつ、このもどかしい距離を書くのが大好きなんです!笑”これからも変わらずお付き合い下さいね♪ (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ひろさん» ひろさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<私もスタジアムのシーンを書きながらあの味を思い出してヨダレが出てきました。笑”美味しいんですよね!鹿島にいた頃は特別内田さんのファンではなかったのですが、試合は何度か見に行きました。懐かしいな〜 (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - とまとさん» でもそれ以上の喜びややり甲斐を皆様が下さるから、こうして続けられているのだと思います(*^_^*)「課金制でも読みたい」最高の褒め言葉に心が震えています。(本気です笑)皆様ご期待を裏切らないよう、執筆頑張るぞー!負けませんっo(`ω´ )o (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年8月30日 20時