2 ページ46
18時5分、チケットに記載された座席に着いた頃にはカシマスタジアムは真っ赤に染まっていた。
日中は煌々と照っていた太陽も傾きかけ、ここまで運ばれてくる海風のせいで半袖一枚では少し肌寒い。
念の為持参した薄手のカーディガンを羽織りながら、今朝届いたわけのわからない”旅のしおり”を有難く思った。
ピッチでは鹿島アントラーズとFC東京の選手たちが試合前のアップに勤しんでいる。
探さなくても見つけ出せてしまうその姿は、懐かしくも思えるし初めて見たような気もする。
夕焼けから夜に変わりかけた茜色の空の下
綺麗な汗を流して走る貴方
遠いようで近くて、
近いようで遠くて、
「…美味しい」
大行列の末手に入れた彼お勧めのモツ煮を食べながら、私はその姿をひたすら目で追った。
18時20分、鳴り響くアンセムと共に大歓声が選手たちを迎える。
背番号2の赤いユニフォームを纏う彼の姿に、自然と鳥肌が立った。
集中するように瞳を綴じるその顔は
私も良く知っている
あの日ずっと見ていたから
冷静沈着の中にも燃え滾る闘志があることを
私も良く知っている
あの日ずっと見ていたから
”ピーーー”
誰よりも速くピッチを駆け上がるその姿は
私も良く知っている
あの日ずっと見ていたから
茜色の空の下で走るその姿は
私も良く知っている
あの日一秒たりとも目が離せなかったから
高校三年生の秋、
彼らの試合を初めて見たあの日も、私はこうして貴方に目を奪われていた。
貴方が優しい嘘をついた あの日
儚くも私は
貴方をもっと好きになってしまったんだ
”ピーピーピーーー”
この日の鹿島は3-1で白星をあげた。
スタンドから沸き上がる大歓声に、先程よりも一層身体の芯が震えて。鳥肌が立って。
此方を見上げ、照れ臭そうに笑う彼。
輝く汗を拭い達成感に包まれたその顔を
私は今日まで知らずにいた
あの日貴方は 決して私を見なかったから
「…お疲れ様」
あの日よりもずっと遠くに居るはずの貴方。
なのに何故か、
あの日よりずっと近くに居る気がしたー
523人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
laiz(プロフ) - 娘×2さん» 娘×2さん、はじめまして。初めから読んで下さりありがとうございます!確かに、まだ誰も「好き」とは言葉にしていませんね^ ^いつ頃その言葉が出てくることでしょう…そして初めに言うのは誰かな(^-^)続編「月白(つきしろ)」を作成致しました。是非覗きにいらして下さい (2014年10月24日 20時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
娘×2(プロフ) - 初めまして(^-^)『碧』から読み始めてやっと追い付きました!!まだ誰も『好き』と伝えてないのにキュンキュンしまくってます。続きが楽しみです♪待ってます(*^^*) (2014年10月23日 20時) (携帯から) (レス) id: d30826829b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - みいさん» みいさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<おっしゃる通り、その内亀に抜かれますね(^ ^)笑”現在編なんてサクッと好きって言っちゃえばいいのにと思いつつ、このもどかしい距離を書くのが大好きなんです!笑”これからも変わらずお付き合い下さいね♪ (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ひろさん» ひろさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<私もスタジアムのシーンを書きながらあの味を思い出してヨダレが出てきました。笑”美味しいんですよね!鹿島にいた頃は特別内田さんのファンではなかったのですが、試合は何度か見に行きました。懐かしいな〜 (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - とまとさん» でもそれ以上の喜びややり甲斐を皆様が下さるから、こうして続けられているのだと思います(*^_^*)「課金制でも読みたい」最高の褒め言葉に心が震えています。(本気です笑)皆様ご期待を裏切らないよう、執筆頑張るぞー!負けませんっo(`ω´ )o (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:laiz | 作成日時:2014年8月30日 20時