二つの始まり ページ37
「ここ座ってて。」
ドーンと響く音に誰もが夜空を見上げていた。
”綺麗”だとか、”凄い”だとか、そう溜息を零し立ち止まる人々の間をすり抜け、私達は先程見つけた小さな公園に足を進める。
水道の蛇口を捻れば、チョロチョロと流れるそれは夏のせいで生温かい。
飛び散る水滴が一つ私の下駄に落ちて、その温度が、何故かアスファルトの上で割れた彼のヨーヨーを思い出させる。
「見せて」
ブランコに腰掛けていた小関くんの足元にしゃがみ、Tシャツの裾に手を伸ばす。
”ごめん。”なんて申し訳なさそうにしている彼はきっと、まだ私のハンカチのことを気にしているのだろう。
「洗剤ないから完全には落ちないと思うけど。」
その優しさに小さく笑いながら、私は濡 らしてきたハンカチで真っ赤な染みを叩いた。
この公園は意外と穴場なのかもしれない。そんなに人も多くなく、少し欠けているがちゃんと花火も見渡せる。
ぽつぽつと居るその人達は殆どが恋人同士だろう。薄暗い公園の中寄り添っているその姿は、まるでドラマのワンシーンのよう。
数十メートル先で突然始まったキスシーンから目を逸らすと、顔を引きつらせる小関くんと視線が絡んだ。
彼もきっとそれから目を逸らしたばかりなのだろう。少しの気まずさと居心地の悪さに、私達は互いに苦笑いを浮かべた。
雄「結構落ちたね。」
「うん。」
次々と響く音に横を向けば、幾つもの色鮮やかな花火が咲いていた。
何週間も前から心待ちにしていたその風景は、予想外の出来事のせいか何処か物憂げに見えて。
「?」
Tシャツの染みをトントンと叩きながら前を向くと、彼の視線は夜空に咲く花火ではなく、
何故か真っ直ぐに私に注がれていた。
雄「あ、いや……今思ったんだけど、今日の委員長いつもと違うね?」
何故か恥ずかしそうに、鼻の頭を人差し指で掻いている彼。
逸らした視線は、直ぐに此方に戻されて。
「メイク、違うからかも。」
雄「あー、そっか」
「変?」
雄「いや全然!そういうんじゃなくて!」
また目を逸らし、はにかむ彼。
雄「いつもよりちょっと大人っぽい。…かも」
張り切ってしてきた付け睫毛に気づかれたことが、何だか少し恥ずかしくなる。
「…はい。あとはお母さんに漂白してもらって。ハンカチ洗ってくる。」
一人見上げた夜空には、歪なピカチュウが浮かんでいた。
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laiz(プロフ) - 娘×2さん» 娘×2さん、はじめまして。初めから読んで下さりありがとうございます!確かに、まだ誰も「好き」とは言葉にしていませんね^ ^いつ頃その言葉が出てくることでしょう…そして初めに言うのは誰かな(^-^)続編「月白(つきしろ)」を作成致しました。是非覗きにいらして下さい (2014年10月24日 20時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
娘×2(プロフ) - 初めまして(^-^)『碧』から読み始めてやっと追い付きました!!まだ誰も『好き』と伝えてないのにキュンキュンしまくってます。続きが楽しみです♪待ってます(*^^*) (2014年10月23日 20時) (携帯から) (レス) id: d30826829b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - みいさん» みいさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<おっしゃる通り、その内亀に抜かれますね(^ ^)笑”現在編なんてサクッと好きって言っちゃえばいいのにと思いつつ、このもどかしい距離を書くのが大好きなんです!笑”これからも変わらずお付き合い下さいね♪ (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ひろさん» ひろさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<私もスタジアムのシーンを書きながらあの味を思い出してヨダレが出てきました。笑”美味しいんですよね!鹿島にいた頃は特別内田さんのファンではなかったのですが、試合は何度か見に行きました。懐かしいな〜 (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - とまとさん» でもそれ以上の喜びややり甲斐を皆様が下さるから、こうして続けられているのだと思います(*^_^*)「課金制でも読みたい」最高の褒め言葉に心が震えています。(本気です笑)皆様ご期待を裏切らないよう、執筆頑張るぞー!負けませんっo(`ω´ )o (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年8月30日 20時