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余りのパンフレットを抱えながら、すっかり静かになった廊下を歩く。
まだ片付け途中の祭りの名残が、達成感に包まれた胸を少し寂しくさせた。
夜のせいで薄暗い校舎。
窓から見える星空を眺めながら歩いていれば、階段の踊り場から小さな話し声がして足を止める。
「?」
見上げるとそこには、
頬を紅く染め俯いている女の子と、気まずそうに頭を掻く彼の姿。
『あの………私、内田先輩のことが、』
そういうことに疎い私でも、その場面が何であるのかはすぐにわかる。
「…、」
彼の返事を盗み聞いてから行こうなんて一瞬思ったが、
気付かれぬようそっと足音を消し、遠回りをして生徒会室に向かった。
抱えていたそれを机に置くと、無音の部屋にドサっと音が響く。
忘れものはないかだとか、やり残したことはないかだとか、そんなことを考えながら思うのは、やはり楽しかった今日のことで、
そして、
ついさっき出くわしてしまった、
あの場面のことで、
文化祭の日に告白なんて、何かの物語の場面でなら見たことがある。
そしてそういう物語では大抵、二人の想いはロマンチックに通じ合うものなのだ。
「………」
窓から射し込む薄明かりに照らされていた女の子は、なんだかとても可愛く見えた。
引きつった頬を紅く染め、震えるその声は、彼にだけ届かせているかのようにか細くて。
彼も、ああいう女の子が好きなのだろうか。
柔らかくて、優しげで、ニッコリと微笑むような、可愛らしい女の子が好きなのだろうか。
「………」
窓に映った自分の顔は何だか情けない。
こんなことを考えながら胸をざわつかせている私は、一体どうしてしまったのだろう。
ふと、彼の隣で波打つ鼓動と、
触れた右手に感じた熱を思い出した。
さすがにもう居ないだろうと思いながらも、念のために遠回りをして下駄箱に向かう。
階段の踊り場を見上げれば、そこにはもうあの場面は無くなっていて、小さく小さく安堵の溜息を漏らす。
二つ隣、彼の下駄箱にはもう靴はない。
一人で帰ったのか、それとも”二人”で帰ったのか、そんなことを思いながら校舎を出ると、
「…、」
入り口の扉には、気怠そうに寄りかかる彼の姿。
篤「さっき見てたっしょ。」
「…え、」
私を見つけるなり、”変態。”と悪戯に笑う。
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laiz(プロフ) - 娘×2さん» 娘×2さん、はじめまして。初めから読んで下さりありがとうございます!確かに、まだ誰も「好き」とは言葉にしていませんね^ ^いつ頃その言葉が出てくることでしょう…そして初めに言うのは誰かな(^-^)続編「月白(つきしろ)」を作成致しました。是非覗きにいらして下さい (2014年10月24日 20時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
娘×2(プロフ) - 初めまして(^-^)『碧』から読み始めてやっと追い付きました!!まだ誰も『好き』と伝えてないのにキュンキュンしまくってます。続きが楽しみです♪待ってます(*^^*) (2014年10月23日 20時) (携帯から) (レス) id: d30826829b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - みいさん» みいさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<おっしゃる通り、その内亀に抜かれますね(^ ^)笑”現在編なんてサクッと好きって言っちゃえばいいのにと思いつつ、このもどかしい距離を書くのが大好きなんです!笑”これからも変わらずお付き合い下さいね♪ (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ひろさん» ひろさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<私もスタジアムのシーンを書きながらあの味を思い出してヨダレが出てきました。笑”美味しいんですよね!鹿島にいた頃は特別内田さんのファンではなかったのですが、試合は何度か見に行きました。懐かしいな〜 (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - とまとさん» でもそれ以上の喜びややり甲斐を皆様が下さるから、こうして続けられているのだと思います(*^_^*)「課金制でも読みたい」最高の褒め言葉に心が震えています。(本気です笑)皆様ご期待を裏切らないよう、執筆頑張るぞー!負けませんっo(`ω´ )o (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年8月30日 20時