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時刻は17時50分。
”あーうまかったー”と満足気な溜息を吐いている彼は、ケチャップ多めのオムライスを心ゆくまで堪能したようだ。
綺麗に空になった皿を下げている最中、飲んでいた珈琲をテーブルに置いた小関くんが私を呼び止める。
雄「委員長、18時で上がりでしょ?」
「そうだけど。」
雄「この後さ、花火やんない?」
「…花火?」
テーブルの下に置いていた黄色のビニール袋を手に取った小関くん。
突然の誘いに呆気に取られていた私に、”ドンキで大量に買ってきた。”と無邪気に笑う。
「花火って、三人で?」
黄色のそれからはみ出して見える手持ち花火のパッケージ。
最後にしたのは小学生の頃だっただろうかと、少しの懐かしさをおぼえた。
雄「田城に電話したんだけどさ、出なくて。”花火やるから18時に喫茶店集合”ってメールしといた。」
「…で、何て?」
雄「まだ返事来てない。」
ポケットからiPhoneを取り出してみたものの、小関くんのそれにはまだ繭子からの返信は来ていないようだった。
明るくなったロック画面には、年末にも見た彼女とのツーショット写真。
”あぁ、”と恥ずかしそうにスリープボタンを押したその姿が、私の心をほんの少し楽にする。
雄「花火出来るとこ調べてきたから、みんなでやろうよ。」
でも気になったのは繭子から返信が来ていないことだった。
まだメールを見ていないのだろうか。それとも、見ているけど返信をしていないのだろうか。
その小さな違いは、私にとってとても重要で、
「…私は、いいよ、」
雄「そんなこと言わないでよ。委員長いないと花火出来ないんだって。」
「?」
雄「チャッカマンもマッチも買ってないの。うっちーがさ、委員長が持ってるって言うから。」
何のことかさっぱり分からずに彼を見ると、我関せずにひたすらiPhoneを弄っている彼。
暫くして思い出したのは、
ーこれあげる。ー
ー貰っとけって。なんかに使うかもしんないでしょ。ほら、花火とか。ー
ーそんなこと言わねーで貰ってって。俺もいらないの、そーゆうの。ー
年末に彼から無理矢理渡された、見知らぬ電話番号とハートマーク付きのマッチ箱だった。
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laiz(プロフ) - 娘×2さん» 娘×2さん、はじめまして。初めから読んで下さりありがとうございます!確かに、まだ誰も「好き」とは言葉にしていませんね^ ^いつ頃その言葉が出てくることでしょう…そして初めに言うのは誰かな(^-^)続編「月白(つきしろ)」を作成致しました。是非覗きにいらして下さい (2014年10月24日 20時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
娘×2(プロフ) - 初めまして(^-^)『碧』から読み始めてやっと追い付きました!!まだ誰も『好き』と伝えてないのにキュンキュンしまくってます。続きが楽しみです♪待ってます(*^^*) (2014年10月23日 20時) (携帯から) (レス) id: d30826829b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - みいさん» みいさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<おっしゃる通り、その内亀に抜かれますね(^ ^)笑”現在編なんてサクッと好きって言っちゃえばいいのにと思いつつ、このもどかしい距離を書くのが大好きなんです!笑”これからも変わらずお付き合い下さいね♪ (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ひろさん» ひろさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<私もスタジアムのシーンを書きながらあの味を思い出してヨダレが出てきました。笑”美味しいんですよね!鹿島にいた頃は特別内田さんのファンではなかったのですが、試合は何度か見に行きました。懐かしいな〜 (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - とまとさん» でもそれ以上の喜びややり甲斐を皆様が下さるから、こうして続けられているのだと思います(*^_^*)「課金制でも読みたい」最高の褒め言葉に心が震えています。(本気です笑)皆様ご期待を裏切らないよう、執筆頑張るぞー!負けませんっo(`ω´ )o (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年8月30日 20時