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『Aちゃん、意外とやるんだね。ハンサムなボーイフレンドがもう一人居たのかい?』
冗談混じりに笑うマスターは、”ケチャップ多め”のオムライスを慣れた手つきで作っていく。
ニッコリと目尻を細めるその視線の先には、この喫茶店の雰囲気にはあまり似合っていない彼らが居て、
「やめて下さい。笑」
一番奥の席に座る彼らも噂話に気づいたのだろう。
此方に振り向くと、マスターに向かってペコっと小さく頭を下げた。
『珈琲はまたAちゃんが淹れてみるかい?』
「いえ、私のはお気に召さなかったみたいなので、マスターがお願いします。笑」
マスターが淹れたブレンドコーヒーを二つ、ケチャップ多めのオムライスを一つトレイに乗せ、彼らの元に向かう。
あれから彼とは、携帯電話をすられる以前のようにくだらないメールを幾つかした。
<この画像見て笑ったら負け。>だとか、<安部先生が清高の卒業生と結婚したらしい。>だとか。
週一のペースで突然送られてくるそんなメールに混じり、<俺明日休みなんだよね。> <友達居ないから暇。>という具体的なメール。
それはまるで、どこまで踏み込むべきか探っているかのようだった。
「お待たせしました。”ケチャップ多め”のオムライスと、”マスターが淹れた”ブレンドコーヒーです。」
篤「ふっ」
嫌味っぽくそう言った私に、小さく笑った彼。
雄「何これ、うまっ!」
篤「だろ?俺もこれ飲みたかったのに、この前違う店員が淹れたの飲まされたからね。」
「…悪かったわね。」
<私はバレエのレッスン。> <嘘ばっかり。人より友達多いの知ってる。>、私がそんな返信をしたから、彼は一度も電話を掛けて来なかったのだろうか。
私もまたそんなメールに乗せ、どこまで進むべきか探っていたのだ。
篤「これこれ。俺半熟なんちゃらより、昔ながらのオムライスみたいなやつが好きなんだよね。」
雄「あーわかる。ちょっと一口ちょうだい。」
この三ヶ月、何度も着信履歴を開いていた。
彼からのそれが残されていないだろうかと。
私からは一度もメールだって送れなかったくせに、電話を掛けて来ない彼に苛立ったりもした。
会いたかったのだ。
進むべきではないのかもしれないと、得も言われぬ背徳感に駆られても。
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laiz(プロフ) - 娘×2さん» 娘×2さん、はじめまして。初めから読んで下さりありがとうございます!確かに、まだ誰も「好き」とは言葉にしていませんね^ ^いつ頃その言葉が出てくることでしょう…そして初めに言うのは誰かな(^-^)続編「月白(つきしろ)」を作成致しました。是非覗きにいらして下さい (2014年10月24日 20時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
娘×2(プロフ) - 初めまして(^-^)『碧』から読み始めてやっと追い付きました!!まだ誰も『好き』と伝えてないのにキュンキュンしまくってます。続きが楽しみです♪待ってます(*^^*) (2014年10月23日 20時) (携帯から) (レス) id: d30826829b (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - みいさん» みいさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<おっしゃる通り、その内亀に抜かれますね(^ ^)笑”現在編なんてサクッと好きって言っちゃえばいいのにと思いつつ、このもどかしい距離を書くのが大好きなんです!笑”これからも変わらずお付き合い下さいね♪ (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ひろさん» ひろさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません>_<私もスタジアムのシーンを書きながらあの味を思い出してヨダレが出てきました。笑”美味しいんですよね!鹿島にいた頃は特別内田さんのファンではなかったのですが、試合は何度か見に行きました。懐かしいな〜 (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - とまとさん» でもそれ以上の喜びややり甲斐を皆様が下さるから、こうして続けられているのだと思います(*^_^*)「課金制でも読みたい」最高の褒め言葉に心が震えています。(本気です笑)皆様ご期待を裏切らないよう、執筆頑張るぞー!負けませんっo(`ω´ )o (2014年10月23日 19時) (レス) id: 2a8e7ae77e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2014年8月30日 20時