3 ページ3
＿＿＿違う……きっと七彩だ。
出久は家の事なんて一言も話していない。
きっと七彩が私の居ないうちが好転の機会であると判断してそれらしい理由を付けたのだろう。ほんと、どこまでもいやらしい女なんだ。
「とりあえず今日は寝ろ。全部話すのは頭ん中整理してからでいい」
「…ん、ありがとう爆豪さん」
「…湿気た顔してんじゃねぇ。てめぇは雨嫌いだからな、一人で寝れねぇなら添い寝してやんよ」
「違う、一人で寝れるから！もうっ、からかわないでよ」
馬鹿にしたように頭をわしゃわしゃ撫でる手を振り払って玄関の扉を開けた。
『てめぇは雨嫌いだからな』
＿＿＿＿？
あれ、なんでかっちゃんは知ってるの。
「ただいま」
七彩はいるかな。いたら面白いなぁ、とリビングに向かう。ソファに座り、テレビを見ている桃色の髪を見つけてほくそ笑んだ。
「お姉ちゃんただいまっ」
後ろからぎゅっと抱きつくと、ラムネを初めて飲んだ幼児のようにビクッと体を揺らし、震える声で私の名前を呼んだ。
怯えるのも無理ない。声そのものこそ弾んでいるが、この胸の中で渦巻く怒気が声音に含まれているのだから。
「私がいない間はたのしかった？」
「そんな訳、ないでしょう」
細かく震えている七彩の髪を耳にかけて、囁くように呟いた。
「この嘘つき」
ぎゅ、と首に巻きついた腕を少しだけ強めると、七彩が怯えながら私よ腕を乱暴に払う。それに心底笑みが毀れる。
大袈裟によろけて尻もちを着くと、ちょうど良いタイミングでお母さんが入ってきた。
「Aどうしたの？！」
「…なんでもないよ、いきなり抱きついたから七彩お姉ちゃん驚いたみたい。ね？」
「………」
その後、七彩はボソボソと呟いていたけれど無視を決め込んだ。姉妹対決は完全勝利である。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 982人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ばにらちゃん🍨 - 最後の伏線回収がすごかったです･･･！切島･･･！お前黒幕だったのかよ･･･！信じてたのに･･･！w (1月4日 21時) (
レス) @page13 id: f03e70c477 (このIDを非表示/違反報告)
鼓草(プロフ) - 何の害もなさそうな、人懐っこい周りに好かれてるような人間こそ、密に狂ってるものなんですよね…なんとなくそんな予感はしていましたがあたっていたとは…！最高でした！！！！！ (11月24日 14時) (レス) @page18 id: a5f127d657 (このIDを非表示/違反報告)
マシュ(プロフ) - あるある小説かと思いきやの不意打ちでしたっ！伏線すげぇ。とても面白かったです！あー好き。 (2023年4月1日 1時) (レス) @page18 id: 94c7c88031 (このIDを非表示/違反報告)
わ - めちゃくちゃ面白い！！ありがとうございます！！ (2022年11月9日 0時) (レス) @page18 id: 58a0efd7ce (このIDを非表示/違反報告)
零 - 嘘だろ………((( ；ﾟДﾟ)))予想の遥か斜めを行った結末でした❗文才の塊ですか！？ (2022年9月5日 19時) (レス) @page18 id: 6c259301f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春風 恋
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2021年4月10日 12時
