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助けて。叫びを上げたその声が、喉の奥から絞り出すように出されたものが、室内にはやけに響いた。瞬間重たい鉄の扉がギィ…と音を立ててゆっくりと開けられていく。
「…A」
相変わらず眉を顰めて、締まった口を歪ませながらそれでも私の名前を呼ぶ。
彼の赤い瞳を見た瞬間、私の世界に貼られてあった透明な膜が…パリン、パリン、と割れていった。
『誰かに会った時、自己暗示は解ける』
そうだ、私は【緑谷出久が好き】と自己暗示をかけていんだ。歪んだ彼の愛情、狂気を孕んだ目、歪な口物とが緩やかに曲を描いたその表情。
かっちゃんへ手を差し伸べたいのに、私の中では未だに『緑谷出久が気持ち悪い上条A』と『緑谷出久を愛している上条A』が相対して存在している。吐き気がする。
記憶の混濁で頭が痛い、よろけるように倒れた私にかっちゃんは名前を叫びながら近づいた。
「てめぇ、この鎖は誰にやられた。んで今までここにいやがったんだ」
「…あ、私、私誰？出久は？…ヤダヤダ違う出久は嫌い怖い気持ち悪い触らないで…違うもん、出久は私の事唯一愛してくれて…その愛は歪んだもので気持ち悪いものなはず…」
「……A」
「私は誰？今生きてるの？何してたの？…出久、ああそうだしあわせな時間をっううんとても不幸せだった。気持ち悪い反吐が出る…そんな事絶対無いに決まってる！私が出久を…」
「A！！」
ぎゅむっと頬を掴まれ、視線が合うように無理やり方向を変えさせられた。深い、けれど出久とは真逆の澄んだ瞳がかち合う。
「…てめぇ一人で、突っ走ってんじゃねぇ」
「…っう…わ、わたしなにがなんだか…っ、もうわがんなくてっ」
「……ん、悪かったな。もう聞かねぇ」
そう言って不器用な彼に似つかわしくない丁寧な仕草で私を抱きしめ、背中を撫で上げた。
かっちゃんは、嗚咽する私に「心配すんな」「悪かった」「もうぜってぇ離さねぇから」と繰り返し呟いている。
安心させる為に放った言葉は、胸の奥に沈んでしまうようなやけに重いものだった。きっと、彼が放った言葉達は幼少期の出来事の謝罪でもあったのだろう。
＿＿＿＿不器用なかっちゃんは、行動でしか示すことができないから。
暴君で唯我独尊の彼が、私一人をひたすらに求めヒーローとなった。かっちゃんは心を入れ替え私自身を見てくれるようになった。ハッピーエンド以上の何があるだろうか？
＿＿＿胸糞バットエンドだよ、ばぁか。
かっちゃんの胸に抱かれ、ニヤリと笑を零した。
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ばにらちゃん🍨 - 最後の伏線回収がすごかったです･･･！切島･･･！お前黒幕だったのかよ･･･！信じてたのに･･･！w (1月4日 21時) (
レス) @page13 id: f03e70c477 (このIDを非表示/違反報告)
鼓草(プロフ) - 何の害もなさそうな、人懐っこい周りに好かれてるような人間こそ、密に狂ってるものなんですよね…なんとなくそんな予感はしていましたがあたっていたとは…！最高でした！！！！！ (11月24日 14時) (レス) @page18 id: a5f127d657 (このIDを非表示/違反報告)
マシュ(プロフ) - あるある小説かと思いきやの不意打ちでしたっ！伏線すげぇ。とても面白かったです！あー好き。 (2023年4月1日 1時) (レス) @page18 id: 94c7c88031 (このIDを非表示/違反報告)
わ - めちゃくちゃ面白い！！ありがとうございます！！ (2022年11月9日 0時) (レス) @page18 id: 58a0efd7ce (このIDを非表示/違反報告)
零 - 嘘だろ………((( ；ﾟДﾟ)))予想の遥か斜めを行った結末でした❗文才の塊ですか！？ (2022年9月5日 19時) (レス) @page18 id: 6c259301f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春風 恋
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2021年4月10日 12時
