涙なんて出ない ページ25
※色々捏造
※なんでもOKな方のみ
＊＊＊＊
以前、私は燈矢にぃに「パパの事、好き？」と聞いたことがある。
我ながら恐ろしい質問をしたものだ。今はもう恐ろしくてしょうがないよ。燈矢にぃは、うーん、とあからさまに考える素振りを見せたあと、困ったように笑って「好き」といった。
私は一生、その笑顔を忘れることは無いだろう。
＊＊＊＊
6月、下旬。梅雨はもう開ける頃なのにも関わらず、雨がざあさあ降っていた。
周りは傘を刺しているのに、私だけはびしょ濡れのまま、呆然と立っている。
今日、燈矢にぃのクラスはUSJに行ったらしい。燈矢にぃも「頑張って活躍してくる」と意気込んでいたのに。
大きな爆発があったそうだ。不運な事に、その場の誰も個性不利で、その爆発や、それに伴って起きた火事に対応出来なかった。
そんな中最低限の被害で済んだのは、ある一人の少年のおかげである。
少年に助けられたクラスメイトの女子は言う。
『火の着いた棒がこちらに飛んできた時はもうダメだと思いました。
ですが、私たちは無傷だったのです。青い炎が私たちの身を囲って守ってくれて…』
少年の担任は言う。
『彼が居なかったら私たちはとっくにダメでした。彼の炎が安全な場所へ運んでくれたのです。
……しかし、私は見てしまいました。彼が身を焦がしながら火事や爆発の被害を抑えている事に。
咄嗟に駆けつけようとした頃には……もう。』
泣きながら記者会見をする担任を、無の感情で見る。
火事を見に来た周りの人たちも「お気の毒に」と他人行儀に話していた。
私の兄、轟燈矢の尊い犠牲により、死者は一人で済んだらしい。酷い怪我は何人かいるものの、それでも皆一命を取り留めることが出来た。
＿＿＿＿尊い、死。
名誉ある死に方だとみんな讃える。しかし、未だにそれを理解することが出来なかった。
＿＿＿燈矢にい。
優しくて、ベタベタに甘やかしてくれた私たちの長男が居なくなってしまった。涙なんて出ない。私はここまで冷徹だっただろうか。
＿＿＿＿せめて、雨が降って良かった。
ただひたすら、色のない世界にぽっかり空いた胸の傷。私は初めて、孤独を知った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2308人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コウ(プロフ) - 前に見て探してたんですけどもう一度見てもとても面白かったです！とても好きな作品の一つなのでパスワード解除をいつまでも待ってます (1月9日 14時) (
レス) @page36 id: eadaa937b0 (このIDを非表示/違反報告)
ココ(プロフ) - 数年前の記憶頼りにやっとこの作品を見つけられました！体育祭編が特に大好きだったんですけど、もう見れなくなっていてとても寂しいです。ヒロアカの作品の中で1番好きな作品なのでパスワード解除を願っています。 (12月25日 15時) (レス) id: 88c4b07abd (このIDを非表示/違反報告)
猫春#ねこはる - 何故、、 何故、、、何故今出会ったんだ!!もっと前に出会いたかったうええええええん(泣き声赤ちゃん) (12月25日 13時) (レス) @page3 id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
K - もっと早くこの作品に出会いたかった、 (12月25日 12時) (レス) @page36 id: 604c6c9f40 (このIDを非表示/違反報告)
ＭＡＯ(プロフ) - 最高に面白かったです。続きが気になりますのでパスワード教えて下さい。 (12月20日 22時) (レス) id: 7661953892 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春風 恋
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2020年8月29日 11時
