全部、私が許してあげる2【約ネバ/短編集】

観用少女パロディ 2【ノーマン】 ページ5

彼女が、ゆっくりと目をあけた。




きゃー、きゃーと女子が喜びで叫んでいる。男子も顔には出さないが興味があるよう。




開いた瞳は、宝石、と例えるに相応しい瞳だ。


キラキラと光加減で反射している青い瞳。

ゆらゆら、ゆらゆらと揺れる青は、海のように雄大で、空のように輝かしい。





彼女の瞳は、騒がしく手を伸ばす少女達でもなく、彼女を抱き上げているママでもなく、遠くで見ている僕を一心に見ていた。



その視線に気づいたのか、みんな僕と彼女を見始めた。




彼女はいそいそと下ろすように身振り素振りでママに伝え、地面に足を降ろす。


瞬間、よろりと彼女の体が傾いて、そのまま倒れてしまった。





ざわ、と周りがどよめくが、彼女は気にしないできょとんとしていた。



すぐに立ち上がり、最初こそ不安定な足取りだったが、最後には駆け足で僕の方にやってきた。





彼女は減速もせず、勢いかけて僕に抱きつく。




「……わたし、Aと言います。わたし、ミルクとお菓子しかたべません。あとは、あなたの愛をかてにして生きます。」




んんん？？なんの事だかちんぷんかんぷんだ。




困ったようにママを見ると、ママはクスリと笑った後、




「…そう、ノーマンを選んだのね。たしかに彼は優しく、愛情たっぷり注いでくれる。…うん、あなたにぴったりだわ。仲良くね」



こくり、と彼女が頷き、僕の胸に再度ぎゅっと力を込めた。



「…ノーマン、あなたは彼女に、Aに好かれたのよ。Aは観用少女【プランツドール】

…プランツはね、人からの好意で生きるの。いわばその好意は植物を育てる苗床。
その主の苗床に選ばれたのがあなたなの。」





少しだけ、難しかったかしら？と眉を下げて笑う。



「彼女に愛情をたっぷり注いであげて。でないと彼女は【枯れて】しまうから。」



「……枯れると、どうなるの？」



「死 んでしまうわ」




また周りがどよめいた。

ぎょっとして、自分の胸の中の彼女を見たが、相変わらずAはニコニコしている。




「人形、なのに？」



「生きる人形と言ったでしょう？」





頑張ってね、とママは言って踵を返してしまった。



呆気に取られていたここにいる全員に目もくれず、Aは僕の頬にキスをした。




「これからよろしくね、ノーマン」





＊＊＊




観用少女パロディ。

ご飯も、寝るのも、お風呂に入るのも一緒。ノーマンに育成されていく。

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